産後 疑問 セックス 入浴 避妊

 

出産後に質問されるあれこれ。傷は?セックスは?避妊は?

はじめに

妊娠中、そして分娩中のことについては、様々な情報が流れていますが、出産後に気になる細かいことについては、情報が不足していると感じています。私が一ヶ月検診の時に良く聞かれる内容を中心にまとめてみようと思います。
なお、一般論としては、様々な妊娠の影響は3ヶ月程度続くと思ってください。出血、血圧、むくみなど、妊娠中に変化したものが落ち着くのには3ヶ月程度かかります。

1.少量の出血は3ヶ月ほど続く人もいる。

産後の悪露は1ヶ月程度で無くなると書いてある本が多いです。医師や助産師の教科書にも書いてあることもあります。しかし、これは間違いです。1ヶ月健診の時に悪露が完全に止まっている人は少ないです。少量の出血が続いている人の方がずっと多いのです。
コップ1杯を超えるような出血や、少量の出血が3ヶ月以上経っても出るようなら病院へ行きましょう。

2.傷を縫った糸を抜かなくても良いのか?

会陰の縫合でも、帝王切開の縫合でも、ほとんどの病院で使用されている糸は、時間とともに溶けていく糸です。私はこの25年間で色んな病院へ行きましたが、溶けない糸で縫ったことはありません。よって、抜糸しなくても消えていきます。会陰の引きつれがあって痛みが強い場合には溶ける前に抜糸することもあります。
会陰縫合で良く使われるのはバイクリルラピッドという糸で、42日ほどで吸収されていきます。帝王切開などで使われる糸は2ヶ月ほどで吸収されます。傷の痛みについても、糸が吸収される2ヶ月程度までは様子を見て欲しいとお話ししています。もちろん、痛みがひどすぎる場合や痛みがだんだんひどくなる場合は病院で見てもらいましょう。

3.産後の生理はどのくらいで戻ってくるのか?

個人差がとても大きいので、1年たっても月経が戻ってこないからといって、心配することはありません。月経が戻ってくるまでの期間は、母乳なのか人工ミルクなのかで差があります。母乳をあげている場合には半年から1年くらい、母乳をあげていない場合には、3~6ヶ月程度で生理が再開する人が多いです。1年半が経過しても戻ってこない場合は産婦人科で相談してみましょう。
ただし、1回も月経が来ないまま妊娠する人もいるので、セックスしたことがあるのなら、妊娠していないことを市販の妊娠反応検査薬で確認するようにしましょう。

4.次の妊娠はいつからOK?

A.経腟分娩の人

いつからでもOK。もちろん、体力的にも、環境的にも妊娠が可能な状況であればという意味です。早い人だと産後3ヶ月ほどで妊娠します。すぐの妊娠を希望していない人はきちんと避妊しましょう(8. 産後の避妊法は?を参照)。

B.帝王切開の人

できれば1年くらい空けましょう。よく話し合って、しっかりと避妊をしましょう。ただし、早めに妊娠したからとしても必ず諦めなくてはいけないという訳ではありません。もしそうなったら、産婦人科医と良く相談してください。

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photo: PIXTA

5.産後のセックスはいつからOK?

一般的には一ヶ月健診で問題なしと診断されれば、再開可能です。帝王切開の人は、少し遅くした方が良いかもしれませんね。ただし、女性側および男性側の気持ちが「セックスをしたい!」となってなければ、もう少し延期しましょう。お互いの同意があってから始まるコミュニケーションですね。

6.母乳をあげていたら薬は飲めない?

一部の特殊な薬を除いては、ほとんどの薬は飲めます。もちろん、不要な薬を使わないのは、妊娠してないときでも当然の大原則です。
市販されているレベルの薬はほとんど大丈夫です。花粉症の薬や痛み止めも湿布も目薬も塗り薬も問題ありません。抗生物質については、セフェム系やペニシリン系、エリスロマイシン系は問題ありません、処方してくれる医師に相談しましょう。

7.浴槽につかるのはいつからOK?

ハッキリした基準はありませんが、会陰の傷や、帝王切開の傷の痛みがある程度なくなっていれば可能だと思っています。個人的には、産後1~2週間程度経過していれば問題ないと思います。子宮口は少し開いているかもしれませんが、腟の奥まで風呂水が浸入することは考えにくいです。また、水道水中の細菌より、皮膚の方がずっと細菌の量は多いので、お風呂につかることでさらに汚くなることはないと思います。どうしても心配な人は、一ヶ月健診で問題ないと言われるまで待ちましょう。

8.産後の避妊法は?

産後に予定外の妊娠をしてしまって困る人が時々います。月経とは、身体が妊娠の用意をしたのにも関わらず妊娠しなかった結果として起こります。つまり、排卵後に妊娠しなかった結果として月経が起こるのです。よって、産後の最初の排卵の時に妊娠してしまうと、産後に1回も月経が来ないままで妊娠する人もいます。妊娠をしたくない場合はしっかりと避妊しましょう。産後3ヶ月後に妊娠で来院する人がいます。
避妊法のどれを選ぶのかは、どのくらい妊娠を避けたいのかというレベルと、それぞれの方法のリスクと、母乳をあげているかどうか、を考えて決めます。複数の方法を選択してより効果を高くしましょう。日本で使える避妊法は、コンドーム、低用量ピル、ミレーナ、卵管切除、パイプカット、などです。

A. コンドーム

一番簡単です。男性側の協力が必要です。ただし、破れたり漏れたりすることもあり、年間妊娠率は2%程度とされています。正しい使い方をしないと、妊娠率は高くなります。

B. ミレーナ

腟内に黄体ホルモン剤の入った器具を置いておくことで避妊できます。月経量も激減して、月経痛も無くなるので、お勧めです。薬は5年分入っているので低用量ピルよりも通院回数も少なくて、費用対効果が高いです。年間妊娠率は0.1%程度です。
ミレーナの場合ホルモンが血液中にほとんど入らないので、授乳中にも問題ないと考えていますが、少量のホルモンが問題だと思う場合は産後1年くらいまでは待った方が良いでしょう。
WHOでは、分娩後6週間以降ならミレーナを挿入することができるとしています。しかし、授乳中の場合、産後9か月未満で挿入した場合に子宮穿孔のリスクが高くなるという報告があるので、授乳中は産後9か月以降にした方が安全とも言えます。医師と相談しましょう。

C. 低用量ピル

授乳している人は、産後6ヶ月以降に開始できます。授乳していない人の場合は、血栓症のリスクがない場合は産後21日以降に、血栓症のリスクのある場合は産後42日以降に開始できます。生理痛も激減するので、そのために使う人も多いです。
年間妊娠率は0.3%程度です。

D. リズム法や腟外射精

もちろん、これらの方法でも妊娠確率を下げますが、年間で20%程度の妊娠率なので、確実に避妊したい人には勧められていません。

E. 卵管切除/結紮:これ以上の妊娠を望まない人向け

手術によって卵管を切り取ったり、卵管を途中で結んだりして、子宮に卵が行かないようにします。帝王切開の時に同時に行うことがほとんどです。手術の前に相談してみてください。ちなみに、経腟分娩をした人でも、産後1~2日後にへその下を3cmほど切開する手術で卵管切除できます。
基本的には永久的な避妊になります。元に戻すことはできないと考えてください。どうしても再度妊娠したくなったら、体外受精することになります。
年間妊娠率は0.5%程度とされています。

F. 精管切除/結紮(パイプカット):これ以上の子どもを望まない人向け

精管を結んだり、切断したりすることで精子の通り道を無くす方法です。睾丸はおなかの中にはないので、局所麻酔でできるため女性の手術よりも簡単です。
年間妊娠率は0.1%程度とされています。

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この記事で、少しでも産後の不安が解消されるとうれしいです。他に疑問がある場合には、知らせていただければ、記事に追加していきます。

太田 寛

この記事の執筆医師

産婦人科医師

太田寛先生

産婦人科

千葉県成田市リリーベルクリニック勤務。

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