気になるキーワード【ハイリスク妊娠】#2
「ハイリスク妊娠」と言われた! 安心して出産を迎えるために知っておくこと(後編)
前編では、ハイリスク妊娠の基本と、当てはまる要因の全体像を整理してきました。
実際にハイリスクと判断された場合、健診や検査はどう変わるのか、日常生活で何に気をつければいいのか——ここが一番知りたいところだと思います。後編では、診断後の病院での管理体制や、受診の目安になる症状、生活の心がけなどについて解説します。
ハイリスク妊娠と診断されたら? 病院での管理と医療体制
ハイリスクと診断された場合には、産婦人科の医師や助産師、看護師、必要に応じて内科医や持病の診療科の医師が連携して、お母さんと赤ちゃんの健康を守る体制を整えます。
ここでは、病院でどのように管理されるのかを見ていきましょう。
妊婦健診や分娩施設の選択肢が限られることもある
ちなみに、ハイリスク妊娠を区別することの意味は、妊婦さんの既往や合併症に伴う妊娠管理を適切に行うことだとお伝えしました。妊娠中にハイリスク妊娠の要因となる病気が見つかったり兆候が出てきたりした場合は、専門の医療機関での分娩や健診に、途中で切り替えることがあります。
地域によっては、日常の健診は小規模な民間のクリニックで、分娩は提携先の大学病院や基幹病院で、という「セミオープンシステム」が採用されています。リスクの高くない妊婦さんはその流れに乗りますが、ハイリスクの妊婦さんの場合は最初から分娩する施設で継続して管理をしておきたいので、『お産までの健診もうちで受けてね』となり、妊婦健診や通院先の選択肢が狭まってしまうことがあります。
これはお母さんと赤ちゃんの健康状態を、分娩施設で一貫して丁寧に観察していくためのものですので、理解しておきましょう。
かかりつけ医から専門の病院を紹介された場合は、早めの受診を
ハイリスクの妊婦さんは、通常の妊婦健診に加えて、既往のある病気に応じて血圧・尿・採血など検査の回数が増えたり、薬を変更したり、状況に応じて胎児心拍をみるNST(ノンストレステスト)などが追加されたりすることがあります。
また、母体や胎児の状態によっては、早めの入院や専門病院への転院を勧められることも。
急に病状が悪化したことを示すわけではないのですが、検査で異常がみつかったりして健診先の病院で他院の受診をすすめられた場合は、早めに受診をしましょう。

高次施設については妊娠初期の頃に調べておくと安心
妊娠が判明した時には診療所での分娩を希望していたものの、実は双子だったことが分かったり、健診の途中でハイリスクの判断になった場合には、改めて病院を選択し直す必要が出てくるケースがあります。お住まいの地域や里帰り先にどんな高次医療機関があるかは、分娩先の検討の時に、あらかじめ確認しておいた方が良いでしょう。
分娩施設の違いについては、こちらの記事でも詳細を解説していますので、チェックしてみてください。
【医師監修】分娩先の選び方完全ガイド 前編|出産する病院・産院を後悔せず決めるチェックポイントとは?
「周産期母子医療センター」とは?
ハイリスク妊娠を専門的に扱う医療機関として、「周産期母子医療センター」があります。
これは全国に指定された施設で、母体と新生児の両方を支える体制が整っています。
総合周産期母子医療センター:重症の母体や新生児に対応できる、高度な医療設備を備えた病院
地域周産期母子医療センター:地域で妊婦さんを支える中心的な施設
妊娠経過によっては、分娩施設を変更(転院)するよう勧められることもありますが、お母さんと赤ちゃんの安全を第一に考えた判断ですので、安心して医師と相談しながら進めましょう。
赤ちゃんのための備え「NICU(新生児集中治療室)」
NICUとは「新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit)」の略で、生まれたばかりの赤ちゃんが、より慎重に管理される場所です。
体重が小さい赤ちゃん、呼吸が安定しない赤ちゃんなどが一時的に入院します。
NICUがある病院では、小さく生まれた赤ちゃんや早産の赤ちゃんでも、専門スタッフが24時間体制で見守る環境が整っています。

妊娠中に注意すべき生活の注意は?
ハイリスク妊娠と診断された場合でも、毎日の過ごし方を少し意識することで、体と心を安定させることができます。基本的には医師に言われたことは守り、薬も指示通りに内服しましょう。一方で、無自覚に症状が進むこともゼロではないので、「いつもと違う」と感じた場合には、早めの受診を。
すぐに病院へ連絡すべき症状
次のような症状があるときは、ためらわずに受診し、相談しましょう。
お腹の張りが強く続く、または規則的に痛む
・鮮血の出血、または茶色のおりものが出る
・破水したかもしれない(水のようなものが出た)
・急にむくみが強くなった、頭痛や視界のちらつきがある
・胎動(赤ちゃんの動き)が少ない感じが長時間続く
これらは、切迫早産や妊娠高血圧症候群などの兆候であることがあります。少し様子を見ようかな?と思っている間に進行してしまうこともあるため、迷ったら迷わず相談しましょう。医師や助産師が状況を確認し、必要に応じて受診や入院を案内してくれます。
自分でできること・心がけること
日々の生活の中で自分でできる食生活や休養も、ハイリスク妊娠と付き合っていく上で大切な要素です。これはハイリスクの妊婦さんに限らず全ての妊婦さんにとって大切なことですが、神経質になりすぎず、まずはお母さんの心身の健康を大切にしましょう。
体重管理とバランスのよい食事:体重が増えすぎても減りすぎてもリスクになります。野菜・たんぱく質・炭水化物をバランスよく摂りましょう。
適度な運動:無理のない範囲での運動は、体重管理のためにも、スムーズなお産に対しても大事です。散歩や運動など、医師と相談しながら可能な範囲で行うようにしましょう。
無理せず休息、心の休養を:やはり大事なのは心身ともに無理をしないことです。ストレスは体調にも影響します。好きな香りを楽しむ、音楽を聴くなど、自分なりのリラックスの方法を見つけましょう。
禁煙・禁酒の徹底:少量でも赤ちゃんに影響が及ぶことがあります。
ハイリスク妊娠の「不安」との向き合い方
「ハイリスク」と聞いた瞬間、自分は普通じゃないのでは、と思って不安になるかもしれませんが、そんなことはありません。安心して出産を迎えられるように、心の負担を軽くするためのヒントを紹介します。
不安なのは当たり前。まずは気持ちを言葉にしよう
妊娠はお母さんの体に大きな変化をもたらすものですが、それは心も同じです。初めての妊娠ならなおさら、色々と心配ごとや不安があるのは自然なこと。まずは、健診のときに医師や助産師に相談してみましょう。「眠れない」「不安やつわりが重なって泣いてしまう」など、どんなことでも構いません。必要に応じて薬の処方や、精神科、心療内科の受診やカウンセリングにつないでもらえることもあります。
また、パートナーやご家族にも、できるだけ情報を共有しておきましょう。
「こういうことに気をつける必要がある」「こういう状況になったらすぐ病院に行く必要がある」など、話して共有しておき、いざという時に意思疎通がしやすくなります。
ハイリスク妊娠についてのQ&A
Q. 仕事は続けられる?
A. 単にハイリスクの要因があるというだけでは仕事を休まなければならないことに直結はしません。症状が安定していれば在宅勤務などの調整で続ける方もいます。ただ、病状によっては、切迫流産や早産のおそれがあるなどの場合には、医師から仕事を休むように指示がある場合があります。
無理をせず、体調に合わせて休む勇気も大切。必要に応じて「診断書」や「母子健康カード」を活用して、会社に相談しましょう。
Q. 入院準備はいつからすれば良いの?
A. ハイリスク妊娠の方は、早めに準備を開始しておきましょう。長期入院になる可能性を考えると、パジャマや洗面用品、イヤホンや読書グッズなど、入院生活を少しでも快適にできるものを揃えておくのがおすすめ。

知っておきたい「お金」と「公的支援」の話
ハイリスク妊娠では、入院や検査が増えることもあります。
妊婦健診や分娩は保険が適用されず自費診療ですが、ハイリスク妊娠における検査、帝王切開など、保険が適用されるものも多いため、過剰に心配する必要はありません。
ここでは代表的な制度を紹介します。
医療費はどれくらいかかるの?
妊婦健診や出産費用のうち、合併症の治療や入院、帝王切開、NICU入院など「医療行為」にあたる部分は健康保険が適用されます。
また、国からの助成金「出産育児一時金」が50万円追加されるほか、自治体によっては、出産前後の入院に対して医療費助成が出る場合もあります。(例えば、渋谷区のハッピーマザー出産助成金:10万円、港区の出産費用助成金:31万円など)
ただし、これらの助成金は、実際に自己負担として払ったお金と、各種給付金の差額を計算して金額が決まることが多いです。国からの支給や、ご自身が加入している健康保険からの付加給付(法定給付意外に保険者が独自に給付するもの)などから「受け取る助成金」の合計によっても支給額が左右されるからです。
このため、まずは自治体の相談窓口で確認してみるのがおすすめです。
負担を軽くする「高額療養費制度」と「医療費控除」
高額療養費制度:1か月の医療費が高額になった場合、自己負担額の上限を超えた分が払い戻されます。健康保険に加入していれば誰でも利用できます。
医療費控除:1年間に支払った医療費が一定額を超えると、確定申告で所得税の還付を受けられます。
まとめ|ハイリスク妊娠、お産は日頃の心構えや準備が大切
「ハイリスク妊娠」と聞くと、不安ばかりが先に立ってしまうかもしれませんが、逆にいえば、検査や健診の回数を増やして経過を手厚く管理するということは、医療チームに「見守られている」妊娠ともいえます。
妊娠の経過は一人ひとり異なりますし、お産には一つとして同じものはありません。大切なのは、妊婦さんご本人が焦らずに、自分の体と赤ちゃんのペースを信じること。そして、医療チームとともに無事、お産当時に赤ちゃんを迎えることです。むしろ「手厚いサポートのもとで、より安心して出産を迎えられるのだ」と考え方を変えてみましょう。
医師の説明を通じて、自分のハイリスク要因がどんな状態なのか、妊娠生活の上で何に気をつけたらいいのかなどをきちんと理解して、健やかなマタニティライフを過ごしてもらえればと思います。
今回挙げたハイリスクの要因についての細かい詳細も、crumiiの今後の記事でも解説をしていく予定です。
【参考文献・出典】
病気がみえる vol.10 産科 第4版 2023,メディックメディア
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 産科編」
渋谷区公式HP ハッピーマザー出産助成金
港区公式HP 出産費用の助成













