
crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #19
ガーナ視察 性教育編 若年妊娠は自己責任なのか?
crumiiでは、SRHR実現のために国内外でさまざまな取り組みをされている国際協力NGOジョイセフとコラボレーションし、日本や世界にあるSRHRの課題と支援や啓発などの活動について、ニュースピックアップの枠でお伝えしています。
第二回はcrumii編集長の宋美玄が、ジョイセフとガーナで視察した若年妊娠を減らすプロジェクトの続編です。(第一回は実際に若年妊娠をされた方4人にお話を伺いました。)
(写真は取材時に掲載許可をいただいています。)
ガーナでの性教育の実態
赴いたアッパー・マニャ・クロボという地域は全妊娠の約2割が10代の妊娠という、若年妊娠がガーナの中でも多い地域でした。
ある高校で、ピア・エデュケーターによる性教育の授業を見学する機会がありました。授業を担当していたのは、同校の女子生徒4人です。テーマは性感染症についてで、聴講者もまた同じ学校の生徒たちでした。
授業では、性感染症に罹患した性器の写真を教材として用いるなど、実用性と正確性を重視した内容が印象的でした。生徒たちは積極的に質問し、活発なやり取りが見られました。

ピア・エデュケーターが考える「若年妊娠が起こる理由」
授業後、4人のピア・エデュケーターにインタビューを行いました。ピア・エデュケーターは立候補制ではなく、学校側が選抜する形式とのことです。実際に話をしてみると、4人はいずれも落ち着いており、物事を論理的に捉える姿勢が印象的でした。自分の言葉で考えを語る彼女たちからは、自信と責任感が伝わってきました。
「なぜ若年妊娠は起こると思うか」という問いに対しては、「親がしっかりしていないから」「知識がないから」といった答えが返ってきました。確かに、家庭での教育が十分でなかったり、妊娠や避妊に関する知識が不足していれば、望んでいないタイミングで妊娠するリスクは高まるでしょう。親が子供の行動を把握しておらず、夜遅く帰ってきてもとがめたりしなければ、若年妊娠につながるような行動を起こしやすくなるかもしれません。
日本社会でも、若年妊娠を「知識不足による自己責任」として捉える傾向があります。実際、私自身も医師としてのキャリアを始めたばかりの頃、予期せぬ妊娠に直面した女性たちと接しながら、「性教育の不足が原因だ」と考えていました。もちろん、それは事実でもあり、性教育の必要性が大きいことには変わりありません。実際に多くの人が性教育に取り組んでおり、性や生殖の知識と自分の体のことは自分で決める権利があるということを身につけた次世代が増えることは素晴らしいことです。

知識があれば、若年妊娠の問題は解決するのか?
しかし、知識さえあれば、望んだ人生になるのか、妊娠など体に振り回されることがなくなるのか。実際に若年妊娠を経験した4人の女性の話を聞いていると、それだけで語りきれる問題ではないとも感じます。
女性が主体的に選択できる避妊法へのアクセスは十分か、パートナーにコンドームの使用を確実に求められる状況にあるか。さらには、経済的困難の中で、カップラーメン1つの対価で性行為をせざるを得ない若年女性が存在するという現実もあります。年上男性による、パワーバランスを背景とした性的搾取も横行しています。こうした背景を考えたとき、若年妊娠を10代の女性の自己責任としていては、根本的な問題は解決しないと思います。
若年妊娠の経験者と、彼女たちを分かつものとは
前回の記事でインタビューした若年妊娠を経験した女性たちは、どこか幼さが残り、頼りなげな印象を受けました。一方、ピア・エデュケーターの高校生たちは、自分に自信を持ち、精神的にも成熟しているように見えました。両者の間には、モチベーションや環境の違いがもたらす、目には見えない分断のようなものを感じます。
この構図は日本でも同様ではないでしょうか。生まれ落ちる家庭、持って生まれる能力、やる気、努力が認められる環境、など、それぞれに差があります。そして、さまざまなものに恵まれている人は主体的に人生を送りやすく、そうでない人を自己責任だと片付けてしまいがちではないでしょうか。
性教育の充実は、当然ながら不可欠で、今回はピア・エデュケーターという仕組みが意義深いものであることを見ることができました。そして、それだけでは足りないことも見えてきました。
次回は、この分断の背景にある構造的な課題と、より根本的な解決につながるプロジェクトについて紹介していきます。