おりもの 異常

 

《産婦人科医が解説》 よくあるデリケートゾーンのトラブルとおりもの異常の対処法

産婦人科の外来で相談が多い「デリケートゾーンの違和感」「おりものの変化」。
多くはちょっとした生活習慣の工夫で改善できますが、なかには病院での治療が必要なケースもあります。今回は、女性が気になる“デリケートゾーンのトラブル”について解説します。

1. おりものは体の「サイン」

おりもの(帯下)は、子宮や腟から分泌される液体で、腟内をうるおし、細菌から守る役割をしています。実はおりものの状態はホルモンや体調の変化を反映しており、体のサインでもあります。

おりもの 異常
photo: PIXTA

正常なおりものの特徴

・色:透明~乳白色
・量:女性ホルモンの量に応じて変化する。排卵期・生理前・妊娠中は増える。閉経すると減る。
・におい:ほとんど気にならないか、わずかに酸っぱいにおい。
・性状:排卵期には生卵の白身のように伸びる。

異常が疑われるおりもの

以下のようなときは、病気が隠れている可能性があります。症状が続く場合は産婦人科を受診してください。

・灰色や緑色っぽい:細菌感染や性感染症の可能性
・泡立ったり、悪臭が強い:トリコモナス腟症、細菌性腟炎など
・白くポロポロしてかゆみを伴う:カンジダ外陰腟炎
・茶色や血が混じる:ホルモン異常や子宮の病気(子宮ポリープ、子宮頸がん、子宮体がん)の可能性

 

 おりものの色症状治療法
細菌性腟症灰色、緑色くさい
匂い
腟剤
飲み薬
カンジダ外陰腟炎白、黄色かゆみ腟剤
飲み薬
腟トリコモナス症灰色、緑色くさい
匂い
腟剤
飲み薬
クラミジア・
淋菌
黄色無症状
かゆみ
飲み薬
点滴
子宮頸がん・
子宮体がん
出血、茶色無症状
不正出血
手術
抗がん剤
放射線治療

おりものの症状と可能性のある病気

2. 受診した方がいいサイン

以下のような場合は早めに婦人科を受診しましょう。

・強いかゆみ、痛み、灼熱感がある
・悪臭がする(魚のようなにおい、強い腐敗臭など)
・灰色や緑色のおりものが出る
・出血を伴う(特に性交後の出血)
・発熱や下腹部痛を伴う
・繰り返し同じ症状を起こす

性感染症や子宮頸がんなど、放置すると将来に不妊症のリスクになる場合もあります。
恥ずかしさから受診をためらう方も多いですが、産婦人科医は毎日そのような相談を受けていますので、安心して相談してください。

3. デリケートゾーンケアのポイント

「しっかり洗ったほうが清潔」と思い込み、ボディソープや強い洗浄剤でゴシゴシ洗う方もいます。しかし、これはかえって腟内環境を乱し、皮膚のかゆみやおりもの異常を悪化させる原因になります。

正しい洗い方のポイント

・お湯でやさしく洗うのが基本
外陰部はぬるま湯で流すだけでも十分です。

・石けんを使うなら無香料・低刺激のものを
アルカリ性の石けんで皮膚や腟の中を洗いすぎると、皮膚のダメージが強くなります。弱酸性のソープやデリケートゾーン専用ソープがおすすめです。

・腟の中までは洗わない
腟は自浄作用を持っているため、中まで洗うと常在菌(乳酸菌)が減って腟内環境のバランスを崩し炎症や感染のリスクが高まります。
外陰部を中心にやさしく洗い、腟内を洗いすぎないようにしましょう。

・タオルでこすらず、手で洗う
摩擦を避けるため、手のひらでやさしく洗い、清潔なタオルで軽く押さえるように水分を拭き取ります。

4. 下着の選び方のコツ

毎日身につける下着は、デリケートゾーンケアに大きく影響します。
下着を選ぶときは、通気性の良い綿素材で吸湿性のあるものを選ぶと快適に過ごせます。
ナイロンやポリエステルは蒸れやすいので、かゆみやデリケートゾーンの症状があるときは避けましょう。
生理中に同じナプキンやタンポンを長時間交換せずにいると、皮膚のかぶれや、かゆみの原因となります。ナプキンは2~3時間毎に、タンポンも4~8時間ごとに交換するようにしましょう。

おりものシート 吸水ショーツ
photo: PIXTA

5. 自宅でできる予防とケア

デリケートゾーンを守るために、日常生活でできる工夫も大切です。

・生理用品はこまめに交換する
・長時間のナプキン・おりものシート使用を避ける
・トイレ後は前から後ろに拭く(膀胱炎や腟炎予防)

6. まとめ

おりものやデリケートゾーンのトラブルは、女性にとってとても身近な悩みです。
正しい知識を知っておくことで「これは心配ない」「これは病院へ行った方がいい」と判断できるようになります。

・おりものの色やにおいの変化は、体からのサイン
・強いかゆみや悪臭、出血を伴う場合は早めに産婦人科を受診洗いすぎはNG、弱酸性ソープやぬるま湯でやさしく洗う
・下着は綿素材で、通気性と適度なゆとりを重視

「ちょっと気になるな」と感じたときに相談できるかかりつけ婦人科を持っておくと安心です。デリケートゾーンで困ったら、産婦人科にご相談ください。

【もっとくわしく知りたい方へ】
日本産科婦人科学会 動画 https://www.jsog.or.jp/citizen/5764/

柴田綾子

この記事の執筆医師

医長

柴田綾子先生

産婦人科

世界遺産15カ国ほど旅行した経験から母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修し2013年より現職。女性の健康に関する情報発信やセミナーを中心に活動。著書:女性の救急外来 ただいま診断中!(中外医学社,2017)、産婦人科ポケットガイド(金芳堂,2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社,2021)明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社,2022)

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