
crumii編集長・宋美玄の炎上ウォッチ #11
女子トイレの行列はスマホのせい?誰にとってもいいトイレとは?
今回の炎上ウォッチは、女性用トイレの行列に関する論争についてです。
【女性トイレの行列、政府が是正へ緊急通知 見過ごされてきた不平等】(日本経済新聞)
男女トイレ論争が浮き彫りにする「公平性」の難しさ
7月中旬、国土交通省や経済産業省など関係府省が個別に、国内のイベント主催者に向けた緊急通知を出したという報道がありました。仮設トイレを設置する際は男女で混雑の程度に差が生じないよう「バランスのとれた設置数」を求めたということですが、記事の中で「全国の900カ所を超えるトイレを独自に調査した。その結果、総数で見ると男性用の便器の数は女性用の1.7倍を超えていた。」という箇所について、主に男女(と思われるアカウント)で意見が分かれ、論争になっています。
多くの男性と見られるアカウントから反発の声
男性の意見としては、
「小便器は一つ当たりの面積が小さいのだから、数が多いのは当然。それと女性用の個室を同じ一つとしてカウントするのはおかしい」
というものが多く見られました。
また、
「女性トイレにも小便器を導入すればいい」
という書き込みも多かったです。さすがにこれは本気で言ってるわけではないと思いますが、男性側の方が、トイレ事情が恵まれているとする調査結果への反発と思われます。
そして、
「女性がトイレでスマホをいじっているから長くなるのではないか」
「和式便所にすればスマホが使えなくなる」
のように、女性用トイレが大行列になるのは、個室の数が少ないからではなく、中で休憩したりスマホをいじったりしているからであるという、「女性たちの自己責任論」を唱える声もありました。まあスマホをいじっている人はゼロではないでしょうが、スマホのない時代から女性用トイレは行列していましたし、さすがに体の作りの違いを無視しすぎた意見だと思います。
男性が男性用トイレへの不満を述べる人も少なくなく、
「個室でないばかりか仕切りもない小便器はプライバシーがなさすぎるので、いっそ男性トイレも全て個室にしてほしい」
「男性用トイレは個室が少なすぎる上に、全員が大便のため回転がとても悪い。男性用トイレの個室も増やしてほしい」
という声も挙がっています。
女性からは「行列は日常」「個室を増やして」
一方で女性からは、
「本当にその通りで女子トイレはいつも大行列」
「個室の数をもっと増やしてほしい」
といった切実な意見が寄せられています。
男性側の反発の声に対しては、
「女性トイレの行列が解消されれば、男性にとっても彼女や奥さんが早く戻れて良いことではないか。男性側が困ることはないはずなのに、なぜ怒る男性がいるの?」
という疑問の声もありました。確かに、女性用トイレの環境が改善されたとして、メリットが全くない人もいるかもしれませんが、困ることはないはずなので、男性側の反発を不思議に感じた女性は多かったようです。
これに対し多くの男性から、「女性用トイレの個室を増やすことで、男性トイレのスペースが削られる可能性がある」とのコメントが寄せられていました。確かにトイレの面積自体が増えないと考えた場合、女性用個室を増やせば男性用トイレのスペースが減り、個室が今よりも減るなどする可能性があるため反発しているとのことです。なんとも世知辛い話ですが、狭い日本、確かにそうかもしれません。ということは、トイレ問題において男女は利益相反の関係にあるということになります。
女性は個室で何をしているから長いのか

私は女性として49年間、女子トイレを利用してきましたが、トイレの利用時間には人それぞれの差があります。短時間で終わる人も多くいますし(私も普段とても短い方です)、長い間出てこない人もいます。その背景には、女性ならではの事情が数多くあると考えられます。
まず、服装の問題があります。男性はズボンの人がほとんどだと思いますが、女性の服装は非常に多様です。スカートとズボンでもかかる時間がちがったり、オールインワン、サロペットなどのように上下が繋がった服の場合、着脱にとても時間がかかります。「ストッキングとサロペットを組み合わせて、脱ぎ着がめちゃくちゃ大変だった」のようなこともよく聞きます。(ちなみに産婦人科での診察も同じような問題が生じます。)など、男性のズボンに比べて着脱に手間がかかる衣類が多く、これだけでも時間が延びる要因になります。特に冬場は下着を何枚もつけたりタイツを履くなど厚着をしているため、さらに時間がかかりやすいです。
さらに、月経中は生理用品の取り替えが必要となります。ナプキンであれば包装を開けて下着に取り付け、使用済みのものを紙にくるんで汚物入れに捨てるといった作業があります。月経カップを使用している方は少数派かもしれませんが、経血を捨ててカップを洗い(個室内に洗い場があるところをチョイスします)、再度挿入する必要があります。そのうえ、外陰部に付着した経血を丁寧に拭き取るといった時間も必要です。これも経血量が多かったり、アンダーヘアの状態によっては結構な時間を要します。
また、女性は男性に比べて便秘がちであるため、排便に時間がかかることも少なくありません。そして、頻度は高くありませんが、トイレは排泄のためだけの場所ではなく、外出中にストッキングが破れるなどの急な事態が生じた時に、服装を整えるために利用することもあります。そのようなことができる場所はトイレの個室をおいて他にないのです。
このように、女性トイレの利用時間が長くなりがちなのは、決して「マナーの問題」や「スマホをいじるから」という単純な理由ではありません。生活習慣や体調、衣服、さらには生理といったさまざまな事情があるのです。
いがみ合わずにトイレの数を充実させるよう声を上げよう
プライバシーの守られた空間でリラックスして排泄したいというのは性別に関わらず共通の願いではないでしょうか。これからますます高齢化がすすんでいくと、手すりを使ってゆっくり座ったり、衣服の着脱にかかる時間も長くなる方も増えてくるでしょう。また、プライベートゾーンについて小さい頃から学んだ世代の人たちがどんどん大人になってきたら、今のような男性の小便器に異をとなえる人も増えてくるでしょう。もちろん、後ろに並んでいる人のことも考えずに時間を取っていいということではありませんが、男女共にトイレの個室の数が充実していく必要があると思います。
たかがトイレ問題と思う人も多いと思いますが、下痢や過多月経など、健康状態によっては、並ばずに個室に入れるということが非常に大切なことなのです。男女でいがみ合わずに両方とも拡充していけるのがいいなと思います。