漢方薬 夏冷え

漢方と365日。×Crumii #09

夏冷えにおすすめの漢方薬3選

真夏に潜む「隠れ冷え」に注意を

暑い季節なのに手足が冷たかったり、お腹の違和感が続いたりすることはありませんか。それは「夏冷え」のサインかもしれません。冷房の風や氷入りの飲み物などで体の内側が冷やされると、さまざまな体調不良の引き金になります。このような冷えを放置すると、自律神経のバランスが崩れたり、女性特有の不調を悪化させたりする要因にもなるため、早めに対策をとることが重要です。

漢方薬 夏冷え
photo: PIXTA

残暑が続く今の季節に注意したいからだの「内側冷え」

朝夕の風が少し涼しくなってきましたが、日中の厳しい暑さが続いています。外気はまだまだうだるように暑い一方で、室内では冷房により体が冷えやすく、加えて冷たい飲み物や食べ物を摂ることで、体の内部が冷え込む「内冷え」が起こりやすくなります。漢方の考え方では、「気(エネルギー)」「血(血液や栄養)」「水(体内の水分)」の巡りや、冷えがどの程度なのかを丁寧に見立て、その人の体質に合った方法でバランスを整えていきます。

夏冷えにおすすめの漢方薬3選

夏特有の冷えによる不調は、体質や冷え方によって現れ方が異なります。そのため、体の状態に合った漢方薬を選ぶことが大切です。ここでは代表的な3つの処方をご紹介します。いずれも「どんなタイプの冷えに合うのか」を知ることで、自分に合った養生のヒントになるでしょう。

1.当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) : 血流や水分の巡りが滞りやすく、手足の冷えやむくみが気になるタイプの方に

2.人参湯(にんじんとう) : 胃腸が冷えて弱り、お腹の痛みや下痢などを起こしやすいタイプの方に

3.十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) : 疲れやすくスタミナがなく、免疫力の低下も気になるタイプの方に

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

冷えやむくみが気になる「血虚(けっきょ)」+「水滞(すいたい)」タイプにおすすめです。

こんな症状に : 手足の冷え、下半身のむくみ、体の重だるさ、生理不順やPMS、めまい、貧血傾向 など

含まれる生薬 : 当帰、芍薬、川芎、茯苓、蒼朮(白朮)、沢瀉

特徴・効果 : 血の巡りを良くして体を温めながら、水分バランスを整えることでむくみを改善します。特に冷えやすい女性や妊活中の方にも用いられることが多い処方です。味はやや苦味がありつつも、ほんのり甘みを感じる飲みやすさがあります。顆粒剤が多く、朝晩の空腹時に白湯で服用すると効果が出やすいです。

人参湯(にんじんとう)

胃腸が冷えやすい「虚寒(きょかん)」タイプに向いています。

こんな症状に : 冷たい飲食でお腹が痛くなる、下痢しやすい、食欲不振、胃もたれ、体が冷えて元気が出ない など

含まれる生薬 : 人参、乾姜、甘草、白朮

特徴・効果 : 胃腸を内側から温め、消化機能を助けることで冷えによる腹痛や下痢を改善します。特に冷房や冷たい飲み物で体調を崩しやすい方に適しています。乾姜(しょうがの乾燥品)の作用で少しピリッとした風味があり、甘草の自然な甘みと合わさって比較的飲みやすい処方です。顆粒や煎じ薬の形で、食前に白湯で服用するのが効果的です。

十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)

体力が落ちやすい、疲労が抜けない「気血両虚(きけつりょうきょ)」タイプにおすすめです。

こんな症状に : 体がだるくやる気が出ない、夏に体重が減る、食欲不振、風邪を引きやすい、術後や病後の体力低下 など

含まれる生薬 : 人参、白朮、茯苓、甘草、当帰、芍薬、川芎、地黄、黄耆、桂皮

特徴・効果 : 「気(エネルギー)」と「血(栄養)」を同時に補い、全身の活力を回復させます。免疫力を高める作用もあり、疲れやすい体質や病後の回復に役立ちます。やや独特な薬草の香りに加え、桂皮(シナモン)の風味があり、苦味と甘みがバランスよく感じられます。顆粒剤やエキス剤が多く、朝晩の空腹時に服用すると効果が期待できます。

夏特有の冷え対策には漢方の力を

真夏は外気が高温でも、冷房による冷えや冷飲食による内臓の冷え込みが起こりやすいものです。こうした冷えに伴う不調を放置せず、自分の体質や症状に合わせた漢方薬で早めに整えることが大切です。漢方では「証(しょう)」と呼ばれる体の状態を見極めて用いることで、冷えが原因のトラブルを根本から改善に導くことができます。独断で選ぶのではなく、漢方に精通した医師に相談し、自分に合う処方を見つけることで、夏特有の不快な症状に負けない体づくりにつながります。

 

※本記事は「漢方と365日。」の協力で作成されました。

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難しいと思われがちな漢方をよりわかりやすく、そして自分事にしてほしいという願いからオープンした「漢方と365日。」

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この記事の執筆医師

丸の内の森レディースクリニック

吉住奈緒子先生

大阪大学医学部医学科卒。 大阪府立急性期・総合医療センター、厚生労働省医系技官などを経て、現在は東京女子医科大学附属東洋医学研究所 助教。 専門は公衆衛生、東洋医学。毎週火曜日、丸の内の森レディースクリニックで漢方外来を担当。

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吉住奈緒子先生

大阪大学医学部医学科卒。 大阪府立急性期・総合医療センター、厚生労働省医系技官などを経て、現在は東京女子医科大学附属東洋医学研究所 助教。 専門は公衆衛生、東洋医学。毎週火曜日、丸の内の森レディースクリニックで漢方外来を担当。

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