crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #42
アフターピル、ついに市販化が実現!気になる価格や注意点は?
2月2日、日本のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)、からだの自己決定権において、大きな進歩がありました。長らく医師の処方が必要だった緊急避妊薬(アフターピル)が、ついに一部の薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できるようになったのです。
緊急避妊薬はどんな薬?
緊急避妊薬(製品名:ノルレボなど)は、コンドームが破れてしまった、低用量ピルを飲み忘れた、あるいは性暴力の被害にあった際など、避妊が不確実な状態でセックスが行われた可能性がある場合に、妊娠を避けるために事後に服用する緊急避難的な薬です。
SNSなどを見ていると時々誤解されているようなのですが、この薬は「妊娠を阻止する」ためのものであり、「中絶薬(妊娠が成立した後に作用する薬)」ではありません。受精卵の着床を妨げたり、排卵を遅らせたりすることで、妊娠そのものを成立させないように働くものであって、すでに成立した妊娠を終わらせる効果はありません。
また、避妊効果は決して100%ではありません。性行為から72時間以内に服用することで、妊娠を8割程度防ぐとされていますが、あくまで応急処置のようなものであることを忘れないでください。そして、72時間のうちでも、服用するのが早ければ早いほど、その効果は高くなります。
アフターピルについて詳しく解説した記事はこちら。

どこで、いくらで買えるのか
今回の市販化解禁により、あすか製薬の「ノルレボ」が、処方箋なしで購入可能となりました。
購入できるのは: 研修を受けた薬剤師が常駐する特定の薬局やドラッグストアです。厚生労働省のホームページや「ノルレボ」のホームページなどで公開されている取扱店を確認し、事前に在庫や薬剤師の勤務状況を問い合わせることが推奨されています。
費用: 希望小売価格は1錠7,480円(税込)に設定されました。以前の試験販売時には7,000円から9,000円程度でしたが、よりアクセスしやすい価格を目指して設定されています。(もちろん決して安くはありませんが、日本の薬剤の承認の仕組みのためすぐに安く販売するのは難しいという背景があります)
購入にあたって、年齢制限はなく、未成年であっても親の同意は不要です。これは、本当に困った人が拒絶されない重要な条件で、自分の人生や身体を守るための選択肢として、非常に重要な一歩だと言えます。
購入・服用時のルールと注意点は?
ただし、薬局で買えるようになったとはいえ、一般的な市販薬のように棚から取ってレジに持っていくわけではありません。現在のところ、いくつかのルールが設けられています。
第一に、「薬剤師の面前での内服」が必要になります。そのため、プライバシーに配慮したスペースが通常設けられており、そこで内服することになります。また、薬剤師が不在の時間帯には購入することができません。(連休などの場合は薬剤師が出勤している薬局が限られる可能性があります)
第二に、服用して終わりではないという点です。緊急避妊薬を内服しても避妊が成功しないケースも珍しくないからです。服用から3週間後には、妊娠検査薬を使用するか、あるいは産婦人科を受診して、確実に避妊が成功したかを確認することがルールとなっています。

そして今のところ、この「処方箋なしで購入できる薬局」は、まだまだ非常に限られているのが現状です。産婦人科と連携する、プライバシーに配慮したスペースを作る、などのハードルがあるためだと考えられますが、どの薬局でも当たり前に手に入るという状況にはまだ至っていないため、取扱店を事前に確認しておく必要があります。
販売している調剤薬局を探すページはこちら。
これまで行われていた産婦人科での処方はどうなるか
これまで通り、産婦人科クリニックでも緊急避妊薬の処方は継続して行うところが多いと思います。(私のクリニックでは引き続き在庫を置いています)周辺に買える薬局がなかったり、飲む必要があるか、飲んでも大丈夫か医師に相談してから飲みたいという方も引き続きおられると思います。産婦人科に行けば別の方法の緊急避妊(IUSなど)も行える場合がありますし、すでに妊娠していないか気になるケースでは確認することもできます。また、性感染症のチェックや、今後の継続的で確実な避妊法(低用量ピルやミニピル、IUSなど)、月経困難症治療薬(保険ピルなど)についての専門的な相談ができるというメリットもあります。
今回、緊急避妊薬の薬局販売が実現したことは本当に喜ばしいことです。緊急避妊薬において最も重要なのは内服するまでの「時間」をいかに短くするか、だからです。緊急避妊が必要になるシチュエーションは、自己責任と斬って捨てられるものではなく、誰にでも突然やってくる可能性があります。一刻も早く薬にアクセスできる環境が整うことは、望まない妊娠を防ぎ、その後の人生を主体的に生きる大きな支えになります。
そして、からだの自己決定権と主体的な人生のために最も大切なのは正しい避妊の知識を含めた性教育の充実と、確実な方法も含めた避妊のアクセス(費用面も含む)がどの地域でも確保されること。誰もが自分の身体と人生を自分で決められる社会であってほしいと願っています。
緊急避妊薬の薬局販売が実現するまでには、多くの議論と、実現のために尽力してくださった多くの方々の存在がありました。そのご尽力に深い敬意と感謝を表します。まだまだ完璧な制度ではないかもしれませんし、課題も残されています。それでも、日本のヘルスケアが「当事者の選択を尊重する」方向へ大きく一歩を踏み出したことはとても素晴らしく、希望の持てる変化だと思います。
自分自身とパートナーのからだを守るための「もしものおまもり」として、いざという時に薬局で買えるようになったことをぜひ広めてください。















