
漢方と365日。×Crumii #02
春の心と体の不調におすすめの漢方薬3選
春は暖かな陽気で精神が高揚し、気が乱れやすい季節。特に4月は新しい環境によるストレスも重なり自律神経が乱れやすく、心身に不調が出やすい時期です。漢方では、自律神経のバランス調整やストレスへの対応に「肝」が重要な役割を果たすと考えられています。「肝」の働きがスムーズでないと、イライラしやすくなったり、気分が落ち込んだり、不眠に悩まされたりすることもあるので要注意です。
漢方のチカラで不調を根本解決!
新しい環境でのストレスは、漢方では「肝気鬱結(かんきうっけつ)」と呼ばれる状態。肝の働きが滞り、気の流れがスムーズでなくなると、様々な不調が現れます。
漢方薬は、肝の働きを整え、気の流れをスムーズにすることで、心身のバランスを取り戻し、穏やかに過ごせるようサポートします。
春先の不調におすすめの漢方薬3選
1. 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
冷えのぼせ、疲れやすい、肩こり、不眠どの症状のある方に
2. 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
精神不安、不眠、頭痛、肩こり、動悸などの症状がある方に
3. 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
不安感、のど・胸の異物感・閉塞感、動悸、めまい、咳などの症状がある方に

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
比較的体力が低下し、ストレスで気がたかぶったり気の巡りが滞りがちな「気逆」「気滞」タイプにおすすめです。
こんな症状に:イライラ、怒りっぽい、不安感、不眠、神経性胃炎、食欲不振、吐き気 など
含まれる生薬 : 釣藤鈎、柴胡、芍薬、当帰、川芎、茯苓、蒼朮、陳皮、半夏、甘草
特徴・効果 : 気の流れをスムーズにし、ストレスや緊張からくる精神的な不調を整えます。胃腸の働きをサポートする生薬も含まれており、気分の落ち込みとともに起こりやすい食欲不振や吐き気にも対応。柴胡や陳皮の苦みと甘草のほのかな甘みが混ざった味わいで、やや苦めの傾向。顆粒やエキス剤で処方されることが多く、食前に白湯での服用がおすすめです。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
体力が比較的ある方で、気分がふさぎやすく精神不安が続く「気うつ」タイプにおすすめです。
こんな症状に:精神不安、不眠、頭痛、イライラ、肩こり、動悸、焦燥感 など
含まれる生薬:柴胡、黄芩、竜骨、牡蛎、半夏、人参、茯苓、桂枝、大棗、生姜
特徴・効果:緊張や不安、怒りなど感情の高ぶりをしずめ、神経の興奮を穏やかにして不眠や頭痛を改善します。鎮静作用のある竜骨・牡蛎に加え、補気薬である人参が気力を補い、心身のバランスを整えます。やや苦みのある味わいですが、大棗や生姜の風味で飲みやすく調整されています。顆粒やエキス剤での処方が一般的です。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
神経質で、のどや胸のつかえ感が気になる「気滞」タイプにおすすめです。
こんな症状に:不安感、のどや胸の異物感・閉塞感、動悸、息苦しさ、吐き気、咳、めまい など
含まれる生薬:半夏、厚朴、茯苓、生姜、蘇葉
特徴・効果:のどのつかえ(梅核気)や胸の圧迫感、息苦しさなど、気の巡りの停滞からくる不快感に効果的です。ストレスや緊張が原因で現れる「気滞」症状をやわらげ、リラックスを促します。さっぱりとした風味の中に厚朴や蘇葉のやや苦みが感じられますが、比較的飲みやすい処方。顆粒・エキス剤ともに多く使われています。
自律神経の乱れと漢方:まとめ
4月は新しい環境によるストレスで、自律神経が乱れやすく、心身に様々な不調が現れやすい時期です。肝の働きを整え、気の流れをスムーズにする漢方薬は、この時期の心強い味方。自分に合った漢方薬を選び、穏やかに新しいスタートを切りましょう。自己判断せず、漢方に詳しい医師に相談しながら、自分にぴったりの漢方薬を見つけて、快適な春を過ごしましょう。
※本記事は「漢方と365日。」の協力で作成されました。

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吉住奈緒子 先生
大阪大学医学部医学科卒。 大阪府立急性期・総合医療センター、厚生労働省医系技官などを経て、現在は東京女子医科大学附属東洋医学研究所 助教。 専門は公衆衛生、東洋医学。毎週火曜日、丸の内の森レディースクリニックで漢方外来を担当。