crumii編集長・宋 美玄の炎上ウォッチ #17
幸せから一転することもある 産婦人科待合室の「配慮」について
つい先日、SNSに投稿された、ある女性のつぶやきが賛否両論を呼び、拡散されていました。
「診察室で稽留流産を告げられた。待合室には、お腹の大きい妊婦や、エコー写真を見て喜ぶ夫婦、赤ちゃんを抱いた夫婦がいて、辛かった。配慮してほしいと病院に意見をした」
という趣旨のものでした。
妊娠して喜んでいた矢先に、赤ちゃんの心拍が止まっていて「流産」と診断されるだけでも、大きな精神的負担を伴うものです。その直後に、いかにも「幸せそう」に見える人たちが同じ待合室にいる状況がつらかった、という気持ちは、多くの人が想像できるのではないでしょうか。
今回の投稿が、炎上と呼ばれる状態にまで議論が広がった背景には、最後の「病院に意見をした」という一文があったように見受けられます。
SNS上では、さまざまな立場から意見が寄せられていました。まず多く見られたのは、流産のつらさに共感する声でした。
「自分も流産するまでは、流産や死産の悲しみを理解していなかった。でも、お腹に来てくれた瞬間から、パパとママにとっては世界で一番大切な存在なんだよね。悲しいよね」
「同じ経験はあるけれど、そこまで考えなかったし、逆に周りが見えなかった」
また、実際に配慮が可能かどうかは別として、意見を伝えること自体は否定されるべきではない、という声もありました。
「配慮は難しいかもしれないけれど、求めている人に説教をするのは違う」
「理不尽なクレームくらい、言わせてあげてもいいのでは」
一方で、産婦人科や病院という場所の性質を踏まえると、ある程度は仕方がないのではないか、という意見も目立ちました。

「それを言い出したら、『子宮がないから子宮がある人と一緒は嫌だ』『子宮がんだからがんじゃない人と一緒は嫌だ』という話になってしまう。一人ひとりが病院という場所を理解して自己解決するしかないのでは」
「総合病院では、元気になって退院する人もいれば、治療ができずに看取りに向かう人もいる。病院に限らず、世の中はそういう場所。人は、自分が不幸なときほど、自分だけが不幸だと感じてしまうものだと思う」
さらに、立場の違いによる受け止め方の差を指摘する声もありました。
「不妊治療中で、一度も妊娠反応が出たことがない自分にとっては、稽留流産でさえ妊娠できたことが羨ましく感じてしまう」
その一方で、「求めていた配慮はごく限定的なものだった」と補足する意見も見られました。
「私が病院にしてほしかった配慮は、『診断直後は別室に案内してほしかった』というだけ。幸せそうな妊婦さんを見たくなかった」
産婦人科の待合室をめぐる配慮の問題は、今回が初めてではありません。SNSではこれまでも、同様の声が繰り返し上がってきました。
医療側としても、配慮はしたいという思いはあります。しかし、すべての人にとって「ちょうどいい配慮」を用意することは簡単ではありません。実際には、別室に案内されたことで「隔離された」「流産した自分は待合室にいてはいけない存在なのだと感じてしまった」という声が上がったこともあります。
善意で先回りした対応が、かえって傷つけてしまう場合もあるのです。
私自身が通うことのある美容外科では、待合室は完全個室で、患者一人ひとりにスタッフが付き、他の患者と顔を合わせない動線が確保されています。ただし、テナントは非常に広く、客単価も高い。美容医療だからこそ可能な配慮だと感じます。
一方、産科・婦人科は収益性が高い診療科ではなく、限られた時間で多くの患者を診療しています。待合室が混雑しがちなのも現実です。美容外科と同じ水準の対応を求めるのは、やはり難しい面があります。
一部では、芸能人御用達のいわゆる「ブランド病院」で、高額なアテンド料を支払えば、駐車場から誰にも会わずに帰れるサービスがあるとも聞きますが、これはごく特殊な例でしょう。

ただし、難しいからといって「配慮できない」で済ませてよいとも思いません。多くの医療従事者が、心苦しさを抱えながら日々対応しているのも事実です。無神経な声かけや態度は論外ですが、医療機関の物理的な構造そのものについては、どうしても限界がある部分もあります。
流産は全妊娠の約15%に起こるとされ、決して珍しい出来事ではありません。それ以外にも、胎児の病気を指摘されるケース、切迫早産や母体合併症、社会的事情で妊娠継続が難しい人もいます。婦人科を併設する施設では、不妊治療中の人や、悪性腫瘍を含む病気を抱える人も同じ空間を利用します。
できる範囲での配慮は、医療従事者側も模索しています。同時に、産婦人科がそうした多様な背景を持つ人たちが集まる場所であることを、受診する側も知っておくことが、互いにとって少しでも負担を減らすことにつながるのかもしれません。














