
キスでも感染する梅毒って何? その症状・検査・治療方法【産婦人科医が解説】
梅毒はキスや性行為でうつる性感染症ですが、症状がないため知らないうちに感染していることがあります。「梅毒」と聞くと、ちょっと怖いイメージがあるかもしれません。
梅毒は、1回でも性行為のある人であれば、誰でも感染する可能性がある病気です。
そして早期に気づいて治療を受ければ、しっかり治せる病気です。
今回は梅毒について知っておきたいことを解説します。
梅毒は症状がでるまで3ヶ月かかる?
梅毒は、感染してから症状が現れるまで10~90日かかると言われています。さらに言うと、感染しても「まったく症状がでない」状態で、病気だけ進行していくこともあります。
症状がないことも多いので「新しいパートナーができたとき」「心配な症状がでたとき」には検査がおすすめです。
梅毒の症状は、主に以下の4つの段階に分かれます。梅毒の症状は、治療をしなくても自然に消えてしまうのですが、梅毒自体が治ったわけではありません。体の中で梅毒の菌(トレポネーマ)は増え続け重症化します。
以下のような梅毒を疑う症状がでたときは、自然に消えてしまったとしても血液検査を受けることが大切です。
1. 初期症状(第1期:感染から数週間)
梅毒に感染してから数週間後に、小さな痛みのない「皮膚のブツブツ(潰瘍)」が性器や口、肛門の周りに現れます。足のつけねのリンパ節が腫れることもあります。潰瘍やリンパ節は、触っても痛くないので気づかないことも多いです。
2. 全身の発疹や体調不良(第2期:感染から数ヶ月)
感染から数ヶ月後に、体に赤い発疹やしこりが現れることがあります。特に手のひらや足の裏に現れることが多いです。また、発熱や喉の痛み、だるさ、首のリンパ節の腫れなど、風邪のような症状が現れることがあります。
3. 早期発見が出来なかったとき(第3期)
発疹などの症状が治まった後、梅毒菌は体内に残り心臓や筋肉、骨などに感染が進行します。この段階では自覚症状はないので、検査をしない限り自分が感染しているかどうかはわかりません。
4. 神経に感染したとき(神経梅毒)
梅毒の一部(25~60%)は、神経に梅毒が感染し、脳や目に症状がでることがあります。
頭痛(髄膜炎)、視野の異常(眼梅毒)、麻痺(神経梅毒)などが起こることがあります。
梅毒は血液検査でわかる

梅毒が心配なとき、血液検査で調べることができます。
医療施設によって表示が少しことなりますが、RPR法(STS)とTP法(TPHA、TPLA)という2つの項目を調べます。梅毒は、感染してから検査が陽性になるまで約3〜4週間かかります。
そのため、心配な性行為があってから4週間以内に検査を受けて陰性であっても、本当に感染していないかどうかは分かりません。その場合は、2~3週間後に再度血液検査を受けるのがおすすめです。
なお、各地域にある保健センターや保健所では、匿名・無料で梅毒などの性感染症検査を受けられるようになっています。
<梅毒の血液検査について>
STS法 | TP法 | 結果 |
- | - | 陰性 または 感染直後 |
- | + | 梅毒の治療後 または 感染直後 |
+ | - | 感染初期 または 偽陽性 |
+ | + | 梅毒感染 または 梅毒の治療後 |
梅毒は20代女性と20~50代男性に増えている
梅毒は、近年急増しており、2023年の梅毒報告数は14,906人です。
男性は20代から50代、女性は20代に増えており注意が必要となっています。

(政府広報オンライン、https://www.gov-online.go.jp/article/202403/entry-5789.html )
梅毒の治療法は?
梅毒は、早期に治療を受けることで完全に治せる病気です。
治療の方法には、注射剤と内服薬の2つの方法があります。治療後は、血液検査で梅毒が治っていることを確認します。
1. 注射剤
ペニシリン(ステルイズ(R))という抗生剤を注射する方法です。
感染から1年以内であれば、1回の注射で治療が完了することがほとんどです(3割負担で約3100円)。
感染が1年以上前の場合や、感染した時期が分からないときは、3回(1週間に1回を3回)注射することがあります。
2. 内服薬
ペニシリン(アモキシシリン(R))という抗生剤の1日3回の服用を約4週間おこなう方法です。
治療中に血液検査をおこない、その結果をみて服用する期間を決定します。
治療中も相手に感染させる可能性があるため、注射剤や内服薬の治療が終了するまでは、性行為は控えたほうがよいとされています。
妊娠中に梅毒に感染すると赤ちゃんにも感染する
妊娠中に梅毒に感染したり、妊娠する前に梅毒に感染した状態で気づかずにいると、流産や死産の原因となります。梅毒は赤ちゃんにも感染し、赤ちゃんの皮膚、骨、耳、目などに異常がでます(先天梅毒)。
梅毒はコンドームでは予防できない?
梅毒の感染を防ぐためには、コンドームの使用と血液検査が必要です。
理由は、梅毒がコンドームで隠れる部分(陰茎)以外にも存在しているため、コンドームを使用していても、感染してしまうことがあるためです。梅毒は、一生のうち何度も感染するため、一度梅毒の治療をして完治していても、もう一度梅毒に感染することがあります。
● コンドームを使う:性行為中にコンドームを使うことで、梅毒の感染を減らすことができます。100%の予防はできないとされています。
● 血液検査:新しい性的パートナーができたときや、梅毒を疑う症状がでたときは、血液検査を受けることが大切です。
最後に
梅毒は、早期発見と治療によって完全に治療可能です。もし、梅毒の症状や感染リスクが心配な場合は、血液検査を受けることをお勧めします。心配な症状がでたときは、産婦人科、内科、感染症内科などへ相談してください。
【もっとくわしく知りたい方へ】
・厚生労働省 梅毒について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/syphilis_qa.html
【参考資料】
・梅毒診療の 考え方 令和 6 年 3 月
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/syphilis_240404.pdf