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山田ノジルのドラマレビュー #10 『ファーストクライ』第10話(最終話)

ついに最終話!ドラマ『ファーストクライ』が描いた現代社会における出産・子育てとセーフティネットのあり方

子供の手を取る大人の手のイラスト

ドラマ『ファーストクライ 母子救命救急班』が、ついに最終回を迎えました。親友が事件に巻き込まれて亡くなったショックから、ヒロイン・光井は聴力を完全に失い、「母子救命救急班」が解散の危機へ……。そんな絶望から幕を開けた最終話。物語はどん底へと突き落とされたものの、そこからの怒涛の復活劇で、感動の終幕となりましたね。

なかには真矢ミキ演じる神谷院長が「諦めない!」と力強く言い切るシーンで思わず、過去のCMのキメ台詞、「諦めないで!」が頭によぎった方がいるかもしれませんが……ええい、ここはみなまで言うまい。

「子どもは社会の授かりもの」「社会で守るべき存在」を真正面から描いたドラマ

多様な子供たちや子育て家庭のイラスト
Photo:PIXTA 

さて、「すべてが失われた」状態からの起死回生展開は、群像劇の定番でもあるでしょう。逆風に陥ったチームを、かつての患者や周囲のネットのうねりが救い出す。それはまるで、少年漫画のラスボス戦さながらでした。

ドラマに必須である伏線回収は、やはり見ていてスッキリしますね。「自己責任論」という暴力に晒されがちな未受診妊婦たちの問題を、「社会全体のうねり」へとスケールアップさせていく展開は、現代社会におけるセーフティネットのあり方や「子どもは社会の授かりもの。社会で守るべき存在である」という強いテーマを浮き彫りにしていたようにも見えました。

一方、先日たまたま観た映画では、セーフティネットがない悲惨な社会が描かれていました。第一次世界大戦直後のデンマークでおきた実話を元にした『ガール・ウィズ・ニードル』です(日本の似たような事件では、寿産院事件※がありますね)。

混乱する社会の中で頼れる場所を持たない女性たちが、理不尽と悲劇に翻弄されていく。現代とは比にならない数の「こぼれ落ちていく命」に、数日間心をえぐられました。綺麗ごとなど通用しない生存の荒波の前に、持たざる人たちはなんと無力なのか。

※ 1948年、東京・新宿の産院「寿産院」で、預かった乳児を多数死亡させていたことが発覚した事件。犠牲者は100人を超えるとされる。育てられない子どもを託す先が社会になかった時代、そのすき間をこうした「もらい子」ビジネスが埋めていた。

都会のビル群の高台の上から朝日を見る親子3人の後ろ姿Photo:PIXTA 

そうした救いのない歴史のリアリティや、本当の意味での「救えない闇」を知る者にとって、民放のドラマが描くハッピーエンドは、あまりにもおとぎ話的かもしれません。しかしエンタメによって「救い」や「正しい倫理の勝利」が描かれるのは、それを必要とする世の中だということでしょう。

個人が極限まで孤立し、先行き不透明な不安と分断が慢性化した現代社会において、人々は常に精神的なエネルギーをすり減らしています。現実社会が理不尽な絶望に満ちているからこそ、フィクションの世界くらいは正しい倫理が報われ、人と人が手を取り合って再生してほしい――。そんな切実な要請や疲弊こそが、あの予定調和的な大団円を生み出しているのだと感じました。

本作が描いた「正しい物語」は、冷え切った社会のなかに、私たちがかろうじてすがりたい優しさの幻影なのかもしれません。しかし、その幻影に力づけられる世の中そのものを見つめなおす、起爆剤であったと言えるでしょう。

最後に、出演していた赤子たちの尊さに、小一時間のスタンディングオベーションを送り、このレビューの締めとします!
どの子も皆、幸せにスクスクと育ちますように。

 

ファーストクライ 特別編はHuluで限定公開されています。

Hulu オリジナルストーリー スピンオフ視聴リンクはこちら。
 

山田ノジル
フリーライター。女性誌のライターとして美容健康情報を長年取材してきたなかで出会った、科学的根拠のない怪しげな言説に注目。怪しげなものにハマった体験談を中心に、取材・連載を続けている。著書『呪われ女子に、なっていませんか? 本当は恐ろしい子宮系スピリチュアル』(KKベストセラーズ)ほか、マンガ原作や編集協力など多数の作品がある。 X:@YamadaNojiru

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

丸の内の森レディースクリニック

院長

宋美玄先生

産婦人科専門医

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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