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出産 分娩 帝王切開

気になるキーワード「帝王切開」#01

帝王切開とは?分娩が手術になる理由と基本の知識

帝王切開の基本知識

「手術」と聞くと身構えてしまいますよね。帝王切開は、世界中で日常的に行われている出産方法です。日本でもおよそ5人に1人前後が帝王切開で出産しており、決して珍しいことではありません。
ちなみに、「帝王」って何?!と思う方のために解説すると、帝王切開のことを英語で「Caesarean section」といい、このCaesarが「皇帝」を意味するため、昔の医師たちが「帝王切開」と訳したのが始まりだと言われています。ドイツ語の「Kaiserschnitt」が皇帝の切開を意味するという説もあります。
ジュリアス・シーザーが帝王切開で生まれた、という説もあったのですが、当時、帝王切開は母体死亡が前提で行われていたため、彼の母親が大人になるまで生きていたことから、現在この説は否定されています。紀元前の話ですから、赤ちゃんとお母さんを同時に生かす医療技術は、当時なかったのです。

帝王切開とは?経腟分娩との違い

さて、帝王切開は、お腹と子宮に切開を加えて赤ちゃんを迎える手術です。おなかにメスを入れる手術ですから、麻酔を用いて痛みをコントロールしたうえで行います。
腟から生まれる「経腟分娩」との一番の違いは、外科手術であること。その分、術後の回復には一定の時間を要しますが、母体や赤ちゃんの状態に応じて最も安全な方法を選択します。
切開の方法は主に横切開と縦切開があります。日本では下腹部の横切開が一般的で、下着のラインに隠れやすいという利点があります。一方で緊急時や併用手術が必要な場合、胎盤や子宮筋腫など切開するのに障害物がある場合には縦切開が選ばれることもあります。

帝王切開になるのはどんなとき?

帝王切開は「予定(もともと計画されたもの)」と「緊急(分娩の進行により急遽行うもの)」に分かれます。いずれもお母さんと赤ちゃんの安全を最優先に、状況に基づいて医師が判断します。

〈母体側の理由によるもの〉

・前置胎盤(胎盤が子宮の出口に重なっているため、腟からの出産が危険になる状態)のとき
・子宮の手術歴(前回帝王切開、子宮筋腫の手術など)があるとき
・合併症など、経腟分娩の負担が大きい場合 など

〈赤ちゃん側の理由によるもの〉

・逆子(骨盤位:赤ちゃんの頭が上、足やおしりが下になっている胎位)や多胎妊娠(双子以上)のとき
・赤ちゃんの元気が落ちている兆候(胎児機能不全)があるとき
・赤ちゃんのサイズがとても大きいとき
・赤ちゃんの発育が小さめのとき

〈お産の最中の理由によるもの〉

・お産の途中で進みが止まってしまったとき(分娩停止)
・赤ちゃんの心拍に問題が生じたとき
・原因不明の出血、発熱、血圧上昇など、母体の急変が生じたとき

予定帝王切開の多くは陣痛が始まるより前を狙って妊娠38週前後に日程を組むことが多いです。緊急帝王切開は、分娩中の状態に応じて速やかに判断し実施します。

出産 分娩 帝王切開 理由
帝王切開になるのは色々な理由がある

麻酔はどうするの?

ほとんどの施設で、脊髄くも膜下麻酔(下半身に効く麻酔)や脊髄くも膜下+硬膜外麻酔の併用がスタンダードになっています。これは、意識は保ったまま赤ちゃんを迎えられるのが特徴です。緊急で時間がなかったり、合併症があるなど必要な場合には全身麻酔が選ばれることもありますが、いずれも医師が安全性を確認した上で実施します。
麻酔の種類については、こちらの無痛分娩の記事で詳しく取り扱っていますので、こちらの記事も参考にしてください。

まとめ

今回は、帝王切開の基本的な考え方や、帝王切開になる主な理由、そして麻酔の種類について見てきました。帝王切開は、日本では約5人に1人が帝王切開で出産しており、決して珍しい方法ではありません。帝王切開になる理由は、母体側(前置胎盤・手術歴など)、赤ちゃん側(逆子・多胎など)、お産途中のトラブルなど大きく3つに分かれ、いずれも経腟分娩で危険が伴うときや、赤ちゃんを素早く出して、専門的な治療につなげる必要がある場合などに帝王切開が選ばれます。
次回の記事では、これから帝王切開を控えた妊婦さんが気になる帝王切開当日の手術の流れとメリット・リスク、術後の入院生活や回復のステップについて詳しく解説していきます。

 

【参考・出典】
日本産科麻酔学会HP 「帝王切開の麻酔Q&A」
産婦人科診療ガイドライン2023、日本産婦人科医会、日本産科婦人科学会
病気がみえる 産科 第10版 メディックメディア、2021

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

丸の内の森レディースクリニック

院長

宋美玄先生

産婦人科専門医

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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