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クリスマス 性的同意 セーフセックス

男性産婦人科医・重見大介が伝えたいこと #13

【男性必読】「彼女は我慢しているかも?」産婦人科医が伝える性行為の必須知識

大切なパートナーとの性行為では、お互いが安心して楽しめることが何より大切です。しかし、知識や配慮が不足していると、知らず知らずのうちに恋人を傷付けたり悲しませてしまうことがあります。

本記事では、幅広い世代の男性に向けて、性行為の経験有無にかかわらずぜひ知っておいてほしい性や身だしなみの基本知識をまとめました。女性パートナーへの思いやりとしっかりした知識をもとに、恋人を傷付けずにお互いが心地よく過ごすために役立てていただければと思います。

(1)最も大切な「同意の確認」

まず何より理解してほしいのが、性的同意の考えです。
性的同意とは、キスやセックスなどの行為について両者が「それをしたい・嫌じゃない」と積極的に望んでいるか確認し合うことを意味します。これには、コスプレをしてほしいとか、何かのアダルトグッズを使いたいなどの確認も含まれます。

恋人同士や夫婦であっても、相手が望んでいない性行為を無理にすれば、それは相手に深い心の傷を残す「性暴力」になり得ます。お互いに心から同意している場合のみ、その時間は安心できて楽しいものになるということですね。

同意は明確な意思表示によって示される必要があります。よって、沈黙(=明確に嫌と言わない)は同意ではありません。特に自分の方が年上であったり社会的立場が上だったりする場合、相手は断りたくても断れない暗黙のプレッシャーを感じている可能性があります。

実際、日本の法律でも未成年との性行為は同意があっても罪となる場合があります。また、お酒に酔っている人や眠っている人も正常な判断ができず、同意したとはみなされません(不同意性交等罪を参照)。「NO」と素直に言える雰囲気を作り、相手が少しでも嫌がる素振りを見せたらきちんと手をとめ、気持ちを聞いてみましょう。(もちろん、自分が嫌なときや乗り気じゃないことについてもNOと言うことが大事です)

「本当に大丈夫?嫌だったらいつでも言ってね」と一言添えるだけでも、彼女が断りやすくなり安心感につながります。何より対等な立場で、お互い納得していることを大切にしてください。

*不同意性交等罪については以下のサイトも参考にしてください。
法務省. 性犯罪関係の法改正等 Q&A.

(2)セックス前の衛生と身だしなみ

性的なスキンシップの前には、清潔感のある身だしなみを整えることも欠かせません。
ここでは以下の項目をお伝えします。

1. 身体を清潔に
2. 口臭ケアの徹底を
3. 指先はきれいに爪を短く
4. 親しい仲にもマナーあり

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photo: PIXTA

性行為の時間をお互い気持ちよく過ごすために、シャワーを浴びて体を清潔にし(特にデリケートゾーンや脇など汗や臭いの出やすい部分を丁寧に洗いましょう)、服やシーツも清潔な状態にしておきます。「不潔」だと感じてしまうと、性行為よりはるか手前の段階で拒否反応が起こってしまいます。

また、口の清潔さも忘れてはいけません。
歯磨きやデンタルフロス、マウスウォッシュで口内を清潔に保ち、口臭ケアも忘れずに行いましょう。自分の口臭が気になって集中できなかったり、相手に不快な思いをさせたりしないよう、お互いに口元のエチケットはとても大切です(自分では気付きにくかったり、なかなか相手に指摘しにくかったりするので、自分から日頃のケアを徹底していくことをお勧めします!)。

また、意外と見落としがちなのが指先のケアです。
爪が伸びていると触れたときに相手の腟などの粘膜を傷付けてしまう恐れがありますし、爪や指に付いた汚れ・菌が相手の体に入れば感染症の原因にもなりえます。セックスの前には爪を短く切り揃え&やすりで滑らかにしおき、石けんで手をよく洗い清潔な手で触れるようにしましょう(爪が伸びているだけで、多くの女性は抵抗感を持ってしまうはずです)。

そして、付き合いが長くても、「親しい仲にもマナーあり」です。
実際、女性たちへのアンケートでも「セックス前にはシャワーを浴びてほしい」「歯を磨いてほしい」「爪を切ってほしい」といった清潔さに関する要望が圧倒的に多く寄せられています。
*ランドリーボックス. 性行為の前に男性にしておいてほしいことは?圧倒的に多かった回答は〇〇.

大好きな相手だからこそ、エチケットとして「清潔な体と身だしなみ」を忘れずに!

(3)コンドームを使わないことの危険性

代表的な避妊具であるコンドームの使用は、女性パートナーを守るためにとても重要なものです。そして、男性自身のことも守ってくれる味方です。

もしコンドームなしで性行為をすると、性感染症(STI)にかかるリスクと妊娠のリスクが格段に高まります(低用量ピルなど他の避妊法を使っていない場合)。詳しく考えていきましょう。

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photo: PIXTA

まずは性感染症について。
例えば、日本で患者数が最も多い「クラミジア」は若い世代を中心に感染が急増しており、症状が軽かったり無症状のことが多く、気づかず放置すると女性では不妊症などにつながる恐れがあります。実際、誰にでも起こり得る身近な病気であり、男女ともにその危機感を持っておく方が良いでしょう。

そして妊娠の可能性について。
妊娠についても「ちょっとくらいコンドーム付けなくても大丈夫だろう」と考えるのは危険です。健康な男女が避妊なしで性行為を行った場合、年齢や排卵のタイミングにもよりますが1回の性行為で約20~30%の確率で妊娠するとされています。このくらいの確率ですと、「1回だけ」でも妊娠してしまうことは珍しくないですし、実際にそのようなカップルが産婦人科を訪れることも多く経験しました。
妊娠は女性の心身に大きな負担となり、妊娠中絶を考えるにも出産するにも、人生を激変させてしまう可能性があります。もちろん、男性側が逃げ出すなんてことは許されることではなく、男性にとっても人生の一大事となります。

これらのリスクからお互いを守ってくれるのがコンドームです。
正しく使用すればコンドームは性感染症の感染率を7割ほど減少させるとのデータもあります。完全に感染リスクをゼロにできるわけではありませんが、他に有効な手段がないというのも事実なので、必ず使うべきでしょう。
また、コンドームはしっかりと使えれば避妊効果も高いです。ただ使い方が正しくないと避妊効果が落ちてしまうので、以下の記事も参考にしてください。
コンドームを使っていても妊娠してしまうことがあるのはなぜ? 理由と対策を深掘り解説

たとえパートナーがピル(経口避妊薬)を使っていても、コンドームには性感染症予防の役割があります。お互いの将来と健康を守るために、「めんどくさい」「セックスの流れを止めるのが嫌」「付けない方が気持ちいいから」などと考えず、しっかり着用しましょう。

(4)よくある誤解を徹底解説!

ここまでの内容を振り返りつつ、よくある誤解をみていきましょう。

誤解①「長く付き合っている彼女なら誘いを断ることはないはず」「嫌なら彼女の方からNOと言うだろう」

前述したように、例え愛し合っている関係でも、明確な同意のない性行為は深く傷付けるきっかけになりますし、「不同意性交」となり得ます。特に相手に断りづらい力関係がある場合はなおさらです。
「沈黙=同意」ではありません。毎回きちんと相手の気持ちと意思を確認し、嫌がる素振りがあればちゃんと相手の話を聞いてみることが大切です。

誤解②: 「男は身だしなみより中身が大事でしょ。好きなら気にしないはず。」

清潔感は性別に関係なく相手への思いやりの基本中の基本です。多くの女性が性行為の前にはシャワーや歯磨き、爪切りなど清潔な状態でいてほしいと思っています。

どんなに親しくても不衛生だと相手に不快感を与えてしまいます。愛する彼女に嫌な思いをさせないため、エチケットとして常に清潔さを心掛けましょう。

誤解③: 「コンドームを付けると気持ちよくないし、射精の直前に付ければいいかな」

コンドームをつけると確かに感触が多少変わりますが、「安心感」によってむしろ性行為に集中できるとの意見もあります。そして、射精までの間にも微量な精子が少しずつ漏れ出していることがあり、それだけでも妊娠することがあります。よって、コンドームは腟への挿入前からつけることが大事です。また、梅毒、クラミジア、淋菌など性感染症にはたくさんの種類があり、その予防にはコンドームくらいしか有効な予防手段がありません。

自分たちだけは平気だと思わず、コンドームの使用を徹底することが2人を守ることにつながります。

誤解④: 「激しくすればするほど女性は気持ちよくなるんでしょ?」

これもよくある誤解です。おそらくアダルトコンテンツによる影響かと思いますが、以下のようなものは事実とは異なり、誤解のないようにしておいてほしいところです。

前戯が激しい方が女性は気持ちいい?

→腟や乳頭は雑に触れると簡単に傷ついてしまうし、アダルト作品では視聴者を興奮させるために女優さんが演技しています。女性がどのくらいの強さで、どのような前戯をを希望しているのか、ちゃんと確認することをお勧めします。

女性は必ずイクんだよね?

→女性によってオーガズムに達するかどうか、達しやすいかどうかは異なり、個人差が大きいです。オーガズムに達しなくても満足する人もいれば、オーガズムにできるだけ達したい人もいて、その価値観は人それぞれです。

ちょっと強引なくらいの方が燃えるでしょ?

→1つ目のポイントの通り、大前提はお互いの同意です。関係性や性格によって少し強引な雰囲気や行為の方が好きな人もいるでしょうが、それがとても嫌だったり怖いと感じたりする女性もいますので、必ず相手の気持ちを確認するようにしましょう。「顔に射精する」とか「クリトリスをとにかく激しく擦る」とかも嫌な女性は多いはずですので、勝手な思い込みは厳禁です。

以上、ぜひ全ての男性に知っておきたいポイントを紹介しました。

相手への思いやりと正しい知識、そして行動に移すことが何より重要です。不安なことや分からないことがあれば二人で話し合ったり、医療機関に相談してください。
お互いのことを大切にして、安心して心から楽しめる関係性を築くことができるよう、いち産婦人科医として応援しています。

重見大介

この記事の執筆医師

産婦人科オンライン代表

重見大介先生

産婦人科

産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。産婦人科領域の臨床疫学研究に取り組みながら、遠隔健康医療相談「産婦人科オンライン」代表を務め、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りに従事している。他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんに関する啓発活動や、各種メディア(SNS、ニュースレター、Yahoo!ニュースエキスパート)などで積極的な医療情報の発信をしている。

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