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クリスマス 性的同意 セーフセックス

  

クリスマス前に知っておきたい、性にまつわる5つの大切なこと

いよいよクリスマスが近づいてきました。恋人と特別な時間を過ごす計画を立てている方も多いでしょう。ロマンティックなムードが高まる一方で、性に関する正しい知識を持っておくことはとても大切。

本記事では、男女問わず、こんな時期だからこそ知っておきたい「性にまつわる5つの大切なこと」を産婦人科医の視点でお伝えします。大事なポイントを押さえて、大切な人と安心して楽しい時間を過ごしていただけると嬉しいです。

1. お互いの気持ちを大事に距離を縮める大切さ

特別な日だからといって、気持ちが盛り上がるままに進んでしまうのは禁物です。
お互いの気持ちを尊重し、「性的同意」をきちんと確認することが何より大切。相手が本当にその行為を望んでいるか、不安や抵抗はないかなどを、コミュニケーションを通じて確認しましょう。これまでの調査では、高校生の約5〜7割が「性的同意」という概念をよく理解していないという結果も出ています。まだこういったことをきちんとイメージできない人が多い今だからこそ、一人ひとりが意識して相手に確認することが必要です。

性的同意とは、単に「嫌がっていない」ではなく「お互いに明確にOKしている」状態を指します。
例えば、

・「本当に大丈夫?」
・「嫌だったら断っていいからね」
・「お互いに乗り気じゃないときはきちんと言い合おう」

と聞くなど、相手の気持ちを確かめるプロセスが大切です。

仮にどちらかが迷っているなら、その気持ちを尊重しましょう。無理に先に進めてしまうと、後々どちらかに悲しい思いが残ってしまうこともありますし、トラブルに発展してしまうこともあるでしょう。

カップルとしての関係性を深めるには、まず安心して気持ちを打ち明けられる信頼関係が土台に必要です。気持ちがいつも以上に盛り上がってしまう特別な日だからこそ、相手の心に寄り添いながら丁寧に距離を縮めてくださいね。

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photo: PIXTA

2. 楽しむための大前提:安心できる環境作り

性行為を心から楽しむには、お互いが安心できる環境を用意することが大切です。緊張や不安がある状態では、心も体もリラックスできず、せっかくの時間を楽しめません。
たとえば人目が気になったり、誰かに邪魔される心配があったりすると落ち着かないですよね。プライバシーが守られ、リラックスできる空間を選びましょう。また、お互いに「怖くない、大丈夫だ」と思える心理的な安心感も大切です。お酒を飲む場合も、酔いすぎて判断が鈍らないよう注意して、二人が冷静さを保てる範囲で楽しむことがポイントです(これは性的同意にも深くつながります)。

安心できる環境は、結果的にセックスの質そのものを高めてくれます。「安全なセックス」(=セーフセックスと呼ばれます)とは、単に避妊や感染予防だけでなく、お互いの身体と心を守るために十分な知識と準備をもって行う性行為のことです。
こうした安全かつ安心できるセックスを心がければ、意図しない妊娠や性感染症のリスクを減らせるだけでなく、安心感やパートナーシップの質まで高めてくれます。

逆に、不安やプレッシャーを感じたままだと、身体は正直なもので、性的興奮もうまく高まりにくくなります。基本的に、性的な興奮はリラックスした状態で初めて得られるものであり、ストレス下では男性は勃起しにくくなることが分かっています。女性の場合も、ストレスや緊張でホルモンバランスが乱れ、腟が十分に濡れず、痛みの原因になることがあります。

つまり、お互いにリラックスして安心できてこそ、身体もスムーズに応えてくれるというわけですね。「落ち着ける雰囲気作り」は、ロマンティックなムード作り以上に大切ですし、性行為を楽しむために重要とも言えるでしょう。

*「安全なセックス」に関しては、私も自身のニュースレターで詳しい解説記事を書いたので、よければご参照ください。
「安全なセックス」ってどんなもの? 大事な5つのポイント

3. イベントデーでも忘れてはいけない避妊と感染予防

特別な日だからといって、「今日くらい大丈夫だろう」「雰囲気を壊したくない」と避妊や感染予防をおろそかにしてはいけません。

どんなに愛し合っていても、妊娠や性感染症のリスクは常に存在します。実際、10〜20代のおよそ11人に1人の若者が「予期せぬ妊娠」を経験したという国内の調査結果もあります。※参考文献1 その多くは10代に起きており、十分な性の知識を身につける前に妊娠してしまったケースが少なくありません。
特別なイベントの日ほど気持ちが高揚しがちですが、「自分たちには関係ない」「まぁ大丈夫でしょ」と思わずに、きちんと備えをしておきましょう。

避妊について

避妊方法にはいくつか種類がありますが、最も簡便で使いやすいものはコンドームでしょう。コンドームには、精液を腟内に出さないことで避妊する効果があるうえ、性感染症を予防する効果もあります。
ただし、ミスなく完璧に使えないとコンドームの避妊効果はかなり落ちてしまうので、事前によく確認しておきましょう。(こちらの記事もぜひご参照ください:コンドームを使っていても妊娠してしまうことがあるのはなぜ? 理由と対策を深掘り解説

もし女性がピルなど他の避妊法を併用できるなら、さらに避妊の安心感は高まるでしょう。ただしピルには性感染症予防効果はないため、妊娠予防と感染予防を両立するにはコンドームが必須です。
性行為の前には、必ずコンドームを準備しておきましょう。あらかじめコンビニやドラッグストアで買っておくと安心ですが、もし男性が初めて使う場合には、もっと余裕を持って購入しておき、自分にフィットするか、使用方法などを確認しておくと良いでしょう。

クリスマス 性的同意 セーフセックス
photo: PIXTA

性感染症について

性感染症についても油断は禁物です。

たとえば、クラミジア感染症は日本で最も報告数が多い性感染症で、年間2万人以上が診断されています。男性では20〜30代、女性では20代で多く診断されますが、自覚症状が乏しい場合が多く、気づかないうちに体内に広がり、女性では将来の不妊の原因になることもあります。
さらに近年では梅毒の患者報告数が急増しており、2022年には国内で1万人以上の感染者が確認されました。※参考文献2  梅毒は皮膚や粘膜の接触で感染し、性器以外に症状が出ることもあるため、コンドームをしていても完全には防ぎきれない場合があります。

このように、イベントデーであろうと性感染症のリスクはゼロになりません。相手を信頼していても「大丈夫でしょ」と思い込まず、お互い性感染症の検査を直近で受けていないなら尚更、必ずコンドームを使用しましょう。

特別な日はお酒をいつもより飲んでしまったり気分が盛り上がったりしてコンドームを忘れてしまうリスクが高まりがちですが、「これだけは絶対に忘れない」と二人で意識しておいてください。避妊と感染予防は、二人の将来のための「思いやり」でもあります。せっかくの楽しい思い出が、後から不安や後悔に変わってしまわないよう、レストランやプレゼントの準備と同じくらい、しっかりとした準備が大切です。

4. 男性パートナーがコンドームを使ってくれない場合、どうしたらいい?

「彼がコンドームをつけてくれない」という女性の悩みは、よく耳にします。
男性側がコンドームを嫌がる理由はいろいろですが、多くは「生の方が気持ちいいから」といった感情優先のものだったり、「今まで妊娠させたことないし大丈夫」という根拠のない自信によるものだったりします。中には「雰囲気を大事にしたい」「持っていなかった」「付けるのが面倒」といった声もあるようですが、いずれにせよ女性から見れば納得できない言い訳ですよね。

では、彼がコンドームを使ってくれない、使うのを嫌がる、という場合はどうすればいいでしょうか。
まずは、普段から時間をとってきちんと話し合うことが第一です。性行為の最中だと言い出しにくいかもしれませんので、そうなる前のタイミングで「私は絶対にコンドームを使ってほしい」とはっきり伝えましょう。

あなた(女性)自身の健康と将来を守るためであること、妊娠や病気の不安なく楽しみたいからだということを、しっかり説明してください。それでも「平気だよ」「気にしすぎだよ」などと言って避妊をしようとしないなら、その男性とはきっぱり性行為を断る方が良いのではないでしょうか(そのくらい、意図しない妊娠や性感染症は心身へ負担をかけるものです)。

自分の身体は自分のもの。

相手任せにせず、嫌なことにはNOと言う勇気をぜひ持ってください。それでもし機嫌を損ねるような相手であれば、あなたを大切にしていない何よりの証拠ではないでしょうか。

女性の中には「言い出しにくいから…」と渋々避妊なしに応じてしまうケースもありますが、後で困るのは最終的に自分(女性自身)です。事実として、10代での人工妊娠中絶数は日本で年間1万件ほどあり、「27件/日」という頻度です。※参考文献3
そのような事態にならないためにも、妊娠したくないのであれば「コンドームなしでのセックスはありえない」というラインを絶対に譲らないでください。ムードよりも何よりも、自分の体を大切にすることを最優先に考えましょう。

クリスマス 性的同意 セーフセックス 避妊 ピル
photo: PIXTA

どうしても彼がコンドームを使いたがらない場合に備えて、女性自身ができる避妊策も検討しておくとより安心です。代表的なのは低用量ピル(経口避妊薬)の服用で、正しく飲めば避妊率は約99.7%にもなります。
ピルを使うことで妊娠リスクは大幅に減らせますし、生理痛の軽減などの副次的効果も期待できます。ただし、ピルでは性感染症を防げないため、感染予防にはコンドームが必要です。

最後にもう一度強調しますが、避妊は二人の責任です。
片方が嫌がるなら他方が強く主張して当たり前のこと。女性自身の人生を守るために、男性パートナーへ遠慮する必要はまったくありません。お二人の関係性に口を挟むことはできませんが、「そこまで言っても避妊に協力してくれないパートナー」とこの先も付き合うかどうか、冷静に考えるべきケースもあるでしょう。本当に思いやりのある男性なら、あなたを大切に思うからこそ避妊や性感染症予防に協力してくれるはずだと思います。

*「低用量ピル」に関しては、私も自身のニュースレターで詳しい解説記事を書いたので、よければご参照ください。
低用量ピルは何歳から何歳まで使える?長期使用のデメリットは?徹底解説します!

 

いかがだったでしょうか。
性に関する話題は、カップルどうしと言えど、話すのは恥ずかしかったり抵抗があったりしがちです。しかし、自分たちの心と体を守るためにはとても大切なことです。クリスマスのような特別な日を迎える前に、今回紹介した5つのポイントをぜひ押さえておいてください。

お互いを思いやる気持ちを忘れずに、素敵な日を過ごしてくださいね。安全第一で!

 

【参考文献】
1.10〜20代の9.25%が「予期せぬ妊娠」を経験―性教育の不足が若年層の妊娠リスクを高めている実態を明らかに―一般社団法人ソウレッジ
2.近年、感染者数が激増している「梅毒」の怖さとは? #専門家のまとめ
3.厚生労働省資料

重見大介

この記事の執筆医師

産婦人科オンライン代表

重見大介先生

産婦人科

産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。産婦人科領域の臨床疫学研究に取り組みながら、遠隔健康医療相談「産婦人科オンライン」代表を務め、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りに従事している。他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんに関する啓発活動や、各種メディア(SNS、ニュースレター、Yahoo!ニュースエキスパート)などで積極的な医療情報の発信をしている。

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