セルフプレジャー 女性

「セクシュアルプレジャー」の話をしよう #05

セルフプレジャーは、「気持ちよくならないところ」からはじめるのがカギ

セルフプレジャーは、“自分とのセックス”と表現されることがあります。相手のいるセックスで気持ちよさを感じた経験がなく、けれどプレジャーを分かち合えるようになりたい人は、まずは自分とのセックスで気持ちよさを知るのが近道になるでしょう。
「パートナーにどうしてほしいか」を知るためのヒントになるセルフプレジャーではありますが、まずは何よりも「自分が気持ちよくなる」だけを考え、集中してください。相手のことは、いったん頭からデリートしてよいのです。

「気持ちよくないのは、自分がおかしいから?」という声もよく聞きます。セックスのたびに不快感をや痛みを感じる人もいるでしょう。その原因は、きっとあなたの外にあります。触れ方が間違っていたり、乱暴だったりすれば、それは相手の問題です。
あなたが緊張感や恐怖心から身体がガチガチになっているからプレジャーどころじゃなくなっているのだとしても、そうなった原因はあなた自身にはないはずです。

●性感帯がわからない人へ

これまでセルフプレジャーをしたことがない人であれば、「自分で自分を気持ちよくして」といわれても、何をどうしていいのやらと空(くう)を見つめることになるでしょう。
セルフプレジャーには、「こうしなければいけない」というルールはありません。強いて言うなら、プライバシーが守られる場所で、自分だけの時間を持つこと。そして身体を清潔にしておくこと、ぐらいです。
手順も自由です。「気持ちよさそう」と思う場所に、そっと触れてみてください。

「いや、その“どこが気持ちいいか”がわからないから困ってるんだけど?」……おっしゃるとおりです。
でも、触れてみるところからしか、はじまらない。マッサージを思い出してほしいのですが、触れられてはじめて、「ああ、私いまここをほぐしてほしいんだ」とわかることがありますよね。それと同じです。考えるより、感じる。そのほうが圧倒的に、情報量が多いです。

セルフプレジャー 女性
photo: PIXTA

●不安や緊張を取り除く

したことがない人ほど、「セルフプレジャーとは、性器を刺激するもの」というイメージを持っているように見えます。そのことに抵抗があるから、「やらない」「自分には関係ない」となってしまう。

男性が勃起するのも、副交感神経が優位に働いているときです。興奮で鼻息荒くしているときほど男性は反応する、というイメージは、実は間違いなのでした。
女性も同じで、体液が分泌されるーーいわゆる濡れる状態になるのは、副交感神経が優位になっているときです。濡れる濡れないは体質や体調、気分によるところも大きいですが、セックスで「痛みが出るんじゃないか」「本当はしたくない」という不安や緊張がある状態では、濡れなくて当然。リラックスにほど遠いと、快感ともほど遠いです。
ああ、だから私は十分に濡れたことがないんだ……と気づくことも、セルフプレジャーがもたらす大きな収穫のひとつだと思います。

●できるかぎり、そっと触れる

身体がゆるんできたと感じたら、神経が集まっている部分、いわゆる性感帯に触れてみましょう。いきなり乳首やクリトリスをピンポイントで触るのではなく、手のひらでデリケートゾーンや乳房全体をそっと包むようにするだけでもいいのです。そこから、少しだけ手を動かしてみる。
①鈍いところに、やんわり触れる
 ↓
②敏感なところに、やんわり触れる
 ↓
③敏感なところに、ピンポイントで触れる
の順番ですが、①でやめても、今日は②まで、としても構いません。

③の注意としては、強く触れすぎないこと。性感帯、特にクリトリスはとても敏感です。いままで性的に気持ちよくなれなかったと話す人に詳しく聞いてみると、相手の触れ方が強すぎ、もっとはっきり言うと乱暴だったのだろうなと思わされるケースが多いです。
セックスで強い・大きい・激しいをよしとする背景には、「性教育が不十分すぎる」+「AVでセックスを学ぶ男性が多い」の合わせワザがあるでしょう。
それは勘違いでしかないということも、よりよいセックスのために手放してほしいということも、もう何十年も前から女性たちが手を変え品を変え発信してきました。私も微力ながらいろんなメディアでそんな記事を作ってきたのですが、届けたい人にはちっとも届いていないという実感があります。彼らは、そんな情報をブロックしているのでしょう。
女性たちの訴えに耳を貸さず、セックスしている相手の顔を見ず、よって苦痛に気づかず、それよりもAVを信じる。だから起きている悲劇なのだと思います。

●相手との関係をあきらめたくないなら

それによってコミュニケーション不全に陥るのは、男性にとっても不幸なことですが、痛い想いをしているのは女性だけです。
そんな相手とセックスするのはもうやめようといいたいところですが、関係性からそうもいかないことはあるでしょう。ただ、自分の身体や感覚すべてを相手任せにしないことで、自分が変わり、相手も変えることができる道は、まだ残ってます。

セルフプレジャーでの、自分への触れ方については、次回につづきます。

重見大介

この記事の監修医師

産婦人科オンライン代表

重見大介先生

産婦人科

産婦人科専門医、公衆衛生学修士、医学博士。産婦人科領域の臨床疫学研究に取り組みながら、遠隔健康医療相談「産婦人科オンライン」代表を務め、オンラインで女性が専門家へ気軽に相談できる仕組み作りに従事している。他に、HPV(ヒトパピローマウイルス)と子宮頸がんに関する啓発活動や、各種メディア(SNS、ニュースレター、Yahoo!ニュースエキスパート)などで積極的な医療情報の発信をしている。

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