中学生 高校生 予防接種 HPVワクチン

 

女子中高生の皆さんへ:HPVワクチン接種はこれからですか?

高校1年生のみなさま、そして14歳のみなさま!
みなさまこんにちは、産婦人科医の稲葉可奈子です。

小学生・中学生・高校生も生理痛を我慢しなくてよいように、小中高校生も受診しやすいレディースクリニックを作りたいと思い、2024年7月に、渋谷駅直結の東急プラザの中にInaba Clinicを開院し、今は毎日そこで産婦人科診療にあたっています。
大人の方だけでなく、小中高校生も生理痛やPMSで多くご受診されるため、HPVワクチンの定期接種の対象の方で、問診で「HPVワクチン未接種」の場合は、
「HPVワクチンはまだこれからですかね?」
とお声かけをしています。

中学生 予防接種 HPVワクチン
photo: PIXTA

なぜ「高校1年生のみなさま」?

HPVワクチンは子宮頸がんなどの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を防ぐ予防接種ですが、
小学校6年生~高校1年生の女子 が定期接種の対象となっていて、無料で接種できます。

子宮頸がんは女性ならどなたでもかかる可能性がある病気で、しかも20-40代という若い世代での発症が多く、ちょうどこれから結婚や妊娠を考える、というタイミングで見つかることも珍しくありません。
女性の人生を大きく左右しうる子宮頸がんですが、今はかからずにすむ方法があります。
HPVワクチンにより、子宮頸がんの原因となるHPVの感染を防ぐことで、子宮頸がんを約9割防ぐことができます。残りのリスクについては、20歳すぎてパートナーができてからの子宮頸がん検診により前がん病変の段階での早期発見をすることで、子宮頸がんになることを防ぐことができるのです。

HPVワクチンは、接種して以降の新たな感染を防ぐ、という効果で、
HPVは主に性交渉により感染するので、
セクシャルデビュー前の接種が最も有効です。

では、はじめての性交渉より前であれば何歳でもよいかというと、
なるべく若いうちの方がより有効でもあるため、
それらの観点から、日本では小6~高1の女性が無料で接種できる定期接種の対象となっています。

ただ、若干ややこしいのですが、
無料で接種できるのが高校1年生の3月まで、で、15歳以上で1回目を接種する場合は半年かけて全部で3回接種するため、
今の高校1年生が、無料で3回接種するためには、9月までに1回目を接種する必要があります。

厳密には、スケジュールを短縮することで、11月まではなんとか間に合いますが、高校生も忙しいので学校がある時期だとなかなか受診できなかったりします。夏休み中に1回目を接種しておくのがおすすめです。

毎年「え、知らなかった!急いで連れてきます!」という方がいらっしゃるので、必ずお声かけをするようにしています。

タイミングを逃すと「あぁもう3回間に合わない…」となる方が毎年いらっしゃるので、なるべく今のうちに多くの方に知って頂きたいのです。

中学生 高校生 予防接種 HPVワクチン
photo: PIXTA

なぜ「14歳のみなさま」?

タイトルに「14歳のみなさま!」も入れたのは、
これまたややこしいのですが、
9価HPVワクチンの場合、15歳未満で1回目を接種すると3回ではなく2回でOKなのです。

若い方がより免疫がつきやすいため、15歳未満に接種開始する場合は2回で十分効果がありますよ、ということなのですが、
3回接種して悪いことはないことはないものの、注射の回数が少ないとうれしい方が多いですし、中高生も忙しいので、受診回数が少ない方が助かります。

ですので、14歳の方には必ず「14歳のうちなら3回じゃなくて2回ですむよ!」とお伝えしています。それを伝えると「やったー!」「よっしゃー!!」と注射の回数が少なくすむことをご本人が喜ばれますし、
やはり保護者の方が同伴されることが多いので、日程調整的にも回数が少ないのは喜ばれます(仕事の休みと、中高生の予定とのすり合わせはなかなかに大変です…)。

迷ってて、、

ただやはり中には、HPVワクチンについてお伝えすると「まだ迷ってるんです…」という方もいらっしゃいます。
2013年の副反応疑いの報道のインパクトはとても大きいので、無理もありません。

不安に思ってらっしゃる方、迷っていらっしゃる方には、
副反応が疑われた症状については、HPVワクチンを接種していない方でも同じ頻度でみられていて、ということはつまり、HPVワクチンによっておきた症状とはいえない
ということを丁寧にご説明しています。

そうすると、多くの方は「そうだったんですね!そしたらうった方がよいですよね」と仰るので、ちゃんとお伝えすることはまだまだ必要ですし大事だなと思います。

もちろん中には、それでもうちは見送ろうと思う、というご家庭もあります。その場合は、20歳すぎたら子宮頸がん検診の案内がくるから検診受けてね、とお話します(もちろんHPVワクチンを接種した方も検診は大事で、それは最後の接種の時にお話しています)。

知らなかった、知っていたら無料のうちに接種したかった、という方をこれまでたくさん見てきているので、繰り返し繰り返しお伝えしていますが、
高校1年生のみなさま、ぜひ夏休みのうちに1回目を
14歳のみなさまは、ぜひ14歳のうちに1回目を
間に合うように、ご検討下さい!

【参考文献】
N Engl J Med. 2020;383:1340-1348.
BMJ. 2021;372:m4931.

稲葉可奈子

この記事の執筆医師

院長

稲葉可奈子先生

産婦人科

京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。産婦人科診療の傍ら、子宮頸がん予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報を、メディア、企業研修、書籍、SNSなどを通して発信している。婦人科受診のハードルを下げるため2024年7月渋谷にInaba Clinic開院。

監修チームについて知る

シェアする