ワクチン 接種 HPV

crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #21

HPVワクチン接種率上昇 大切なのは「みんな打ってる」という空気

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種率を可視化したサイト「ワクチンJAPAN」がエムスリーから公開され、ニュースになりました。ニュースの中では、高校1年相当の女の子のうち、少なくとも1回目の接種を終えた人は41.9%。対象5学年全体では22.1%に上ることが触れられていました。

HPV接種率、高1は41.9% 推計サイト開設、啓発に期待

積極的推奨が再開した後もはじめは伸び悩んでいた

HPVワクチン 接種率
(ワクチンJAPANより引用)

積極的推奨が再開されてからすぐに接種が進んだ訳ではなく、キャッチアップ接種も三年の猶予がありながら接種率が上がらないまま最後の年を迎え、本当に期限が迫ったところから上昇してきた形です。半年間で3回の接種が必要であるため、2024年の9月までに初回接種を行う必要がありましたが、駆け込みの希望者が多く、ワクチンの供給が追いつかなくなったため、2025年3月までに初回接種を行えば期限が延びるという特例措置が行われ、その最終期限である2025年3月にまた駆け込みで接種が行われるという状態でした。接種が進んできたことが、こうして数字として見える形になったのは本当にうれしいことですし、やはりギリギリまで迷っていたけれど期限が迫って決断したという人が多かったと推測されるため、「期限があることが大切」ということと、「あまり期間が長くても結局期限ギリギリまで先延ばしにしてしまう人が多い」という学びを得たのではないでしょうか。

定期接種が約4割まで回復したことは感慨深い

HPVワクチン 接種率
(ワクチンJAPANより引用)

思い返せば、積極的勧奨が差し控えられていた2014年ごろ、接種率はほぼ0%にまで落ち込み、医療従事者からも長らく否定的な声しか聞こえてこず、「もうHPVワクチンはこの国では広まらないのかもしれない」と、あきらめの気持ちすら抱いていました。それが、まさかここまで回復してくる日が来るとは…。正直、夢のようです。積極的勧奨再開まで尽力されてきた皆さま、再開後も地域で地道に啓発活動を続けている方々に、感謝の気持ちでいっぱいです。

東北5県がトップ5!学ばせていただきたい

HPVワクチン 接種率
(ワクチンJAPANより引用)

サイトでは都道府県別の接種率も公開されていて、特に興味深かったのは、累積初回接種率のトップ5が山形・秋田・青森・宮城・岩手という、東北地方の県であること。一方で、沖縄は17.1%と、全国でも群を抜いて低い数字でした。この差の背景に何があるのか、とても気になります。近いうちに、東北地方で接種率向上の取り組みを行っている方々にお話を聞いて、こちらでも紹介できたらなあと妄想し始めました(実現させたいです!)。

接種率が上がっていくために必要なこと

これまで、多くの人がHPVワクチンの必要性や安全性について丁寧な啓発を行ってきました。子宮頸がんという病気が、多くの人の「子供が欲しい」という希望や、「大切な人と一日でも長くいたい」という思いを奪ってきたことや、副作用について冷静で科学的な情報発信などです。でも、ここまでくると、HPVワクチンの接種率をもっと上げていく鍵は、「みんなも打ってる」という空気感ではないかと思います。そのためにも、このようなサイトができて、打つ人がどんどん増えていることが可視化されることは非常にプラスになるのではと思います。この流れに乗って、男子の定期接種も実現する未来を願っています。

外来でのキラーワード「娘も打ってます」

ちなみに、我が家の13歳の娘も、シルガード9を先日2回接種し終えました。痛がってはいましたが、その後も元気にしております。外来で「うちの娘も打ちましたよ」と話すと、保護者の方々がホッとした表情になるので、科学的な研究結果だけでなく、身近に思える話の共有も大事だなと感じています。
娘自身も、自分が接種したことを私が公言することに納得していて、初回接種のときの様子を自分で動画編集してくれました。せっかくなのでそちらを共有して締め括りたいと思います。

HPVワクチン 接種
(画像をクリックするとTikTokに飛びます)
宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の執筆医師

丸の内の森レディースクリニック

院長

宋美玄先生

産婦人科専門医

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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