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トンデモ産婦人科医列伝 #02

子宮体がん検査が激痛、のち卒倒! 婦人科検診がトラウマになった話【体験談】

年上同僚からの強い勧めで、子宮体がん検査を受けたら……

 

「婦人科検診が怖い」

 

既婚者のA子さんは今から約15年ほど前、22歳の時に受けた子宮体がんの検査が、「トラウマになるレベルで痛かった」と話す。

 

「子宮体がん」とは、子宮頸部より奥の部分、特に子宮の内膜にできるがんで、発症する人の割合は40~60代に多いとされる。無症状のA子さんが受けても、がんが見つかる可能性は低いはずだ。

 

当時A子さんが検査を受けた理由は、年上同僚からの強い勧めがあったからだ。そして、会社の健康診断のオプションにつけた。

 

「当時の同僚の同級生が子宮体がんになったって話から、”調べるなら早いほうがいい!”と言うんです。今思うと正しくは、”もし症状があるのなら、早く調べたほうがいい”という意味の”早いほうが”なんでしょうけど、同僚は”年齢的に早く調べたほうがいい”と勘違いしたんでしょうね。もちろん、自分で調べず鵜呑みにした私も、良くないんですけど……」

 

そうは言っても、親しい間柄の人に言われると「検査しておくのは悪くないし、いい機会だし、ついでだし」と思ってしまいがちである(少なくとも自分はそうだ)。また、検査の妥当性を疑っても、検査をするということは、何かしらの不調を抱えているのかもしれないと想像するし、健康問題、ましてや婦人科系領域というのは性にまつわる部分も大きいので、第三者はなかなか口出ししにくい。健康保険の検診システムも、そこまではひとりひとりチェックするようにはできていないだろう。

 

子宮 子宮体がん 子宮頸がん
画像:PIXTA

 

話が少々それるが、私自身が過去、他人の検査に関して唯一口をはさんだ経験は90年代のことだ。私たちはマスコミ報道による「エイズパニック」を見てきた世代なので(その手の都市伝説もいまだに有名だ)、性交渉がはじまる年頃になると、常に頭の片隅に感染症への不安があった。そんなとある日、バイト仲間が「急に怖くなってHIV検査に行ってきた」と話し出した(当時も現在も保健所で無料・匿名で検査できる https://www.hivkensa.com/)。セーフセックス賛成~。とてもいいアクションだと思う……その場の皆がグッジョ~ブ! とほめたたえる空気になった瞬間、彼女が言った。

 

「でも私、セックスしたことないんだけどね(笑)」

 

薬害、母子感染、他人の血液に触れるような機会もまずない生活だという。「なんでやねん」。その場の全員が、爆速で突っ込んだ。HIV検査のシステム、どうなってるんだろう。

 

細胞をブチ!! と引きちぎられたような感覚。あまりの痛みにぶっ倒れる

 

さて話を、A子さんの検診に戻す。子宮がんの検査は子宮頸がん検査と子宮体がん検査があり、がんに進行しそうな細胞がないかどうかを調べるために「細胞診」が行われる。A子さんが受けた子宮体がんの検査は、子宮内膜の細胞を採取するため、子宮入り口の細胞を採取する子宮頸がん検査に比べると、体の負担が大きい。

 

検査の方法は、検査器具(チューブやブラシ)を、子宮頸部から子宮内部へ挿入し、奥の方の内膜細胞をこすり取って採取(子宮内膜細胞診)したものを調べる。一般的には採取時に「チクチクした痛み」を感じるのが、デメリットである。少々の出血も伴う。

 

この検査、不正出血などの症状があれば受けるべきであるが、無症状の人が受けてもがんが見つかる可能性は低いので、当時22歳のA子さんが、受けるメリットはほとんどないと言っていいだろう(A子さんの心理的なダメージへさらに追い打ちをかけそうで申し訳ないが)。

 

しかも、A子さんは検査の詳細を全く知らなかった。つまりあまりに無防備な状態で検査を受けた。一般に、レディスクリニックの検診などは、内診台に乗ると今からどんなことをするのか医師から説明があったうえで検査が行われると思うのだが、「じゃあはじめますね~」くらいの声かけだったという。

 

「突然の衝撃ですよ、もう。細胞をブチ!! と引きちぎられたような感覚。いってえええええーーーー!!!!! 内診台から降りたあと、痛みでぶっ倒れました。血圧70/30となり、検診中に別室へ運ばれて……痛いやら情けないやら恥ずかしいやら。私は出産経験もないし、もう一度あの痛みに耐えられる自信がありません! 二度とやりたくない! 検査の痛みがトラウマで、産婦人科検診に行きたくない人、いるんじゃないですかね!?

 

「親しい人」「親身になってくれる人」であっても、素人のアドバイスを鵜呑みにしない

 

内診が痛い。検査が痛い。とてもよく聞く問題だ。検査する医療者が、痛くしようとしてやっているのではないのは明白なのだが、受けたダメージというのは、なかなかに後を引く。A子さんはこう話す。

 

「今ってエロ広告とかのせいでおかしな性交とかの知識ばかりが進んで、検診系のことがおろそかな女性もいるんじゃないでしょうか。リスクとか検診の詳細とか、まっとうな知識を知りたいですね」

 

おっしゃるとおりで、手前味噌のようになってしまうが、ぜひ当サイトをご活用いただきたい。「前もって検査の詳細を知り、心構えをしておくのが大事」と言うと、精神論みたいな雰囲気が漂ってしまうが、それでもやはり知っておくのと全く知らないのとでは、大きな違いがあると思う。一方で調べすぎるとデマが入り込むという問題点もあるのだが……。ひとつ言えるのは、「お世話になった人」「親しい人」「親身になってくれる人」であっても、素人のアドバイスを鵜呑みにしないことは大事だろう。

 

ちなみに「通常の内診(触診や超音波検査など)が痛い」「産科における正期産の卵膜剥離(通称・臨月の内診ぐりぐり)が痛い」のは、また別の話。別の機会に、お届けできると嬉しいです。


 

crumii編集長・産婦人科医 宋美玄の解説

 

子宮体がんの検査は子宮の奥に器具を入れるため、子宮頸がん検診や経腟超音波検査に比べるとかなり痛みが強くなることが多いです。

 

ただし、子宮頸がん検診と違って、子宮体がん検査は無症状の人が定期的に受けるメリットは示されていません。疑わしい症状(不正出血やひどい生理不順など)がある、超音波検査で疑わしい所見があるなどの場合に行います。残念ながら痛みを伴う検査で、有効で簡便な麻酔法があるわけではないのですが、局所麻酔などを行うと痛みが多少なりとも軽減することが期待できるため、行っている医療機関もあります。苦痛に感じる人も多い検査ですが、子宮体がんが疑われる場合に必要な情報を得るためのものなので、医師に相談し、説明を受けて納得して受けていただけると幸いです。

 

crumiiでは「産婦人科受診をトラウマにしない」をコンセプトに取り組んでいきます。

 

 

山田ノジル

フリーライター。女性誌のライターとして美容健康情報を長年取材してきたなかで出会った、科学的根拠のない怪しげな言説に注目。怪しげなものにハマった体験談を中心に、取材・連載を続けている。著書『呪われ女子に、なっていませんか? 本当は恐ろしい子宮系スピリチュアル』(KKベストセラーズ)ほか、マンガ原作や編集協力など多数の作品がある。 X:@YamadaNojiru

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

院長

宋美玄先生

産婦人科

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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