子宮筋腫

 

子宮筋腫の症状とは?過多月経・頻尿・不妊…見逃しがちなサインと受診の目安を解説

「最近、生理が重くてしんどい」「お腹が張る感じがする」…そんな症状はもしかしたら、「子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)」という病気のサインかもしれません。子宮筋腫は、子宮にできる「こぶ」のような良性の腫瘍で、女性にはよく見られます。
自覚症状がほとんどないことも多く、多少生理が重くても、ただの体質かなー、と見過ごされがちですが、放っておくと生活に支障をきたすこともあります。この記事では、子宮筋腫の症状や、検査・治療法まで、詳しく解説していきます。

子宮筋腫の手術が専門の先生のインタビューはこちらの記事でも紹介しています。

子宮筋腫ってなに?

子宮筋腫とは?女性に多い良性腫瘍

子宮筋腫は、子宮の筋肉の一部がこぶのように大きくなる「良性腫瘍(がんではない腫瘍)」です。女性ホルモンの影響を受けて大きくなるため、閉経後には小さくなったり、症状が落ち着いたりすることがほとんどです。
多くは命に関わる病気ではありませんが、大きさやできる場所によっては、生理痛などのつらい症状が出たり、不妊や流産の原因になることもあるため、早めにみつけて対応しておくことが大切です。
※良性腫瘍とは、がんのように周囲に広がったり命を脅かしたりするものではなく、比較的ゆっくりと育つできもののことです。

筋腫の分類と特徴

子宮筋腫にはできる場所によって、いくつかの種類があり、症状の出方が異なるのが特徴です。

粘膜下筋腫(ねんまくかきんしゅ):子宮の内側に向かってできるタイプの筋腫。少しの大きさでも出血が増えやすく、貧血などの原因になります。
筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ):子宮の筋肉の中にできるタイプ。この筋腫が最も多く、サイズによって様々な症状を引き起こします。
漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ):子宮の外側に向かって育つタイプ。大きくなると膀胱や腸などの周囲の臓器を圧迫し、頻尿や便秘の原因になることがあります。

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photo: PIXTA

こんな症状があれば注意! 子宮筋腫の主なサイン

生理がつらいのは当たり前、ちょっとした不調はよくあることだし…と思って、症状を我慢していませんか?でも実は、それが子宮筋腫のサインかも。ここでは、見逃されがちな子宮筋腫のサインとなる症状を紹介します。

過多月経・貧血(経血の量・期間・血の塊)

生理の出血がいつもより多い、経血の中にレバーのような血のかたまりが混ざる、出血がダラダラと長引く…。これらは子宮筋腫によくあるサインです。特に粘膜下筋腫の場合、小さめの筋腫でも子宮内膜が広がり、出血量が増えてしまいます。その結果、鉄分が足りなくなって「鉄欠乏性貧血」を起こし、ふらつきや疲れやすさを感じることもあります。

月経痛・下腹部痛

以前より生理痛が強くなった、鎮痛剤が効きにくくなった、あるいは生理以外の日にも下腹部に痛みを感じる、といった変化があれば、筋腫の影響かもしれません。特に筋層内筋腫は、子宮がうまく収縮できずに痛みの原因になることがあります。

頻尿・便秘・腰痛(圧迫による症状)

子宮は色々な内臓の中に位置する臓器です。筋腫が大きくなると、そのすぐ近くにある膀胱や腸が圧迫され、トイレが近くなったり便秘になったりします。また、腰の周囲に重だるさや鈍い痛みを感じる方もいます。これらは、特に大きな漿膜下筋腫で見られる症状です。

不正出血・おりものの増加

生理以外のときに少量の出血がある、生理の終わりかけのような茶色っぽいおりものが出る、といった症状も、子宮筋腫が原因の可能性があります。特に子宮の内側に近い場所に筋腫があると、粘膜が傷つきやすくなり、不正出血やおりものに影響することがあります。

性交痛・下腹部の張りやしこり感

性行為のときに引っ張られるような痛みを感じたり、お腹をさわると硬いしこりのようなものを感じたりすることがあります。これは、子宮が通常より大きくなっているサインかもしれません。子宮筋腫の位置や大きさによっては、下腹部がぽっこり出て上から触るとわかる、という方もいらっしゃいます。

妊娠しづらい・流産リスク(不妊との関係)

子宮筋腫は、必ずしも不妊の原因になるわけではありませんが、場所によっては妊娠のしづらさや流産のリスクを高めることがあります。特に子宮内に突き出すような筋腫(粘膜下筋腫)があると、受精卵が着床しにくくなることが知られていて、大きさや場所によっては、妊活前に手術をすすめられることもあります。

セルフチェック! 子宮筋腫を疑うときのポイントは?

子宮筋腫は初期には自覚症状が出にくく、特に困ることがなかったりします。「ちょっと変だな」と思っても、ただの生理痛だと思い込んでしまったしりて見過ごされがちです。気になる症状がなかったとしても、定期的に、婦人科でチェックしておくことをおすすめします。

次のような症状がある場合、早めに婦人科でエコー検査をし、子宮や卵巣の様子をチェックしてもらいましょう。

・月経量が明らかに多い、夜用ナプキンでもすぐに漏れてしまう
・生理が7日以上続く、または月に2回以上くることがある
・トイレが近い、お腹が張って苦しい、便秘がつらい
・妊娠しにくい、流産が続いたことがある
・生理が重く、ふだんの生活や仕事に支障が出ている

これらは、すべて子宮筋腫が原因で起こりうる症状です。すべてに当てはまる必要はありませんが、以前と比べて変わったと感じるようなことがあれば、どう変化があったかを含めて、医師に相談すると良いでしょう。

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検査と診断の流れ

「婦人科ってちょっとこわい…」「どんな検査をされるんだろう?」そんな不安を感じる方も多いかもしれません。でも、子宮筋腫の検査は、想像よりも負担が少なく、きちんと原因を知るためにとても大切なステップです。検査の流れについてご案内します。

受診の目安|どんな症状があれば病院に行くべき?

前より生理の量が増えた、期間が長くなった、いつもと違う痛みがある。こうした変化を感じたときは、受診をおすすめします。また、妊娠を希望しているのになかなか授からない場合や、不正出血が続くときも、子宮筋腫に限らず病気がかくれていることがあります。一度医師に相談してみましょう。気になる症状があっても、婦人科は行きづらいと感じてしまう方は多いですが、医師に相談することで治療につながるケースも多くあります。

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診断方法|内診・超音波・MRIなどでわかること

子宮筋腫の診断は、主に以下の検査で行われます。

クスコ診(内診):クスコ(腟鏡)という細い器具を挿入し、腟内やおりものの様子、出血の状態を確認します。挿入時の痛みが不安な方は事前に医師に伝えてください。
経腟(けいちつ)超音波検査:膣から小さな棒状の器具を挿入して、子宮の状態を詳しく調べます。子宮筋腫の多くは、この超音波検査で見つかることが多いです。サイズを測り、大きさの変化があるか、経過観察で良いか、手術した方が良いかなどを判断します。性交経験のある人であれば痛みはほとんどありませんが、不安な人は医師やスタッフに申し出ましょう。
MRI検査:MRI(エムアールアイ)検査は、磁石と電波を使って体の中を詳しく映し出す検査です。放射線は使わないので、体への負担が少ないのが特徴です。超音波検査ではわかりにくい筋腫の位置や数、大きさなどをより正確に把握するために行われることがあります。検査中は大きなトンネルのような機械の中に入り、横になってじっとするだけ。特殊な設備なので、クリニックから別の病院を紹介されることもあります。音が大きめで狭い場所に入るので、大きい音が苦手な方や、閉所が苦手な方は事前に医療スタッフに伝えておくと良いでしょう。

他の病気との違い(子宮腺筋症・子宮内膜症との鑑別)

子宮筋腫と似た症状を示す病気として、「子宮腺筋症」や「子宮内膜症」があります。これらはどれも月経痛や出血量の増加を引き起こしますが、病気の成り立ちや治療方法が異なります。そのため、正しい診断を受けることがとても大切です。医師は超音波やMRIの画像をもとに、慎重に見分けていきます。これらの病気についても、別記事で解説していく予定ですので、お楽しみに。

治療が必要なケースとは? 判断基準と選択肢

子宮筋腫が見つかっても、必ずしも治療が必要とは限りません。放っておいても問題のない場合もあれば、治療を選ぶことで症状がぐっと軽くなることも。どんなときに、どんな治療があるのか、整理していきましょう。

経過観察でよいこともけっこう多い

子宮筋腫があったからといって、すべてが治療の対象になるわけではありません。小さくて具体的な症状のない筋腫であれば、定期的な検査でだんだん大きくなったりしないかをチェックし、経過観察で十分な場合もあります。特に閉経が近い年齢の方は、女性ホルモンの減少により自然に筋腫が縮小することもあるため、積極的な治療を行わない選択をすることもあります。

ホルモン療法・鎮痛剤などの薬物療法

症状があるけれど、手術は避けたいという場合には、薬による治療が選ばれることがあります。薬物療法は、直近で妊娠を希望しておらず、手術を避けたい方にとっては有効な選択肢で、ホルモン療法や鎮痛剤などが代表的です。

・各種ホルモン療法:子宮内膜の発育を抑えて生理を少なくし、女性ホルモンを抑制することで筋腫の成長をおさえる働きがあります。ただし長期間の使用には制限がある薬もあるため、医師と相談が必要です。
鎮痛剤や貧血治療薬:痛みや貧血によるふらつきなどの症状を和らげ、日常生活を送りやすくします。ただし、根本的な治療にはなりませんので、ホルモン療法で筋腫の肥大を抑えるのがおすすめです。

手術の種類と適応(核出術・子宮全摘・UAEなど)

筋腫の大きさや場所、症状の強さや不妊との関係などによっては、手術がすすめられることもあります。主な手術方法には次のようなものがあります。昔は、手術はおなかを切ってあける開腹手術がほとんどでしたが、現在では傷が小さく負担の少ない腹腔鏡手術(小さな穴を数か所あけ、細いカメラや手術器具をいれて行う手術)が主流になっています。

・筋腫核出術:筋腫だけを取り除く手術で、妊娠を希望する方に適しています。
・子宮全摘術:子宮をすべて取り除く方法。再発の心配はありませんが、妊娠はできなくなります。
・UAE(子宮動脈塞栓術):子宮に栄養を送る血管を塞ぎ、筋腫を小さくする治療。手術を避けたい方の選択肢となることもあります。

それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、年齢や将来の妊娠希望の有無などによって適した治療法は異なります。医師とよく相談して、自分に合った方法を選びましょう。

筋腫が見つかった時の治療の選択肢については、こちらの記事でも専門の松岡先生にお話を聞いています。

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photo: PIXTA

放置するとどうなるの?合併症や生活への影響

「今はそこまで困っていないから…」と放置してしまうと、将来の妊娠に影響したり、思わぬ体調の悪化を招くことも。ここでは、子宮筋腫を放置したときに起こりうるリスクや、生活への影響について具体的に見ていきましょう。

重度の貧血は日常生活に支障をきたすことも

過多月経が続くと、鉄分がどんどん失われ、重い貧血になることがあります。代謝が悪くなり、めまいや動悸、疲れやすさ、顔色の悪さなどの症状が出てくると、仕事や家事に支障が出るだけでなく、日常生活の質そのものが下がってしまいます。鉄剤だけでは改善しないケースもあり、根本原因である子宮筋腫の治療が必要になることもあります。

不妊・流産・早産のリスク

子宮筋腫の場所によっては、妊娠しづらくなったり、妊娠しても流産や早産のリスクが高くなったりします。特に子宮の内側に向かって大きくなる粘膜下筋腫は、着床の妨げになったり、妊娠を維持しにくくなる原因になります。妊娠を希望する方は、早めに婦人科でエコー検査を受け、自分の子宮や卵巣にそのような要因がないか、知っておくことが大切です。

まれに悪性化した「子宮肉腫」が見つかることも

子宮筋腫は基本的には良性の腫瘍ですが、ごくまれに「子宮肉腫(しきゅうにくしゅ)」という悪性の腫瘍が見つかることがあります。ただし、筋腫がある方の中で肉腫が発見される確率は非常に低いので、過度に心配する必要はありません。とはいえ、筋腫が急に大きくなったり、症状が急激に変化したときは、早めの受診が重要になります。
※子宮肉腫…進行が早く、がんに近い性質を持つ悪性腫瘍です。MRIなどで推定し、病理検査で確定診断します。

早期発見のために知っておきたいこと

定期的な婦人科検診の重要性

子宮筋腫は、初期には自覚症状がないことも多く、気づかないうちに進行していることもあります。だからこそ、年に1回の婦人科検診がとても大切です。特に、30代以降の女性や、生理に変化を感じる方は、定期的な超音波検査などを受けておくと安心です。子宮頸がん検診のついでに相談することもできます。

セルフチェック表・記録アプリの活用

「生理の量が多い気がするけど、比べられない…」という方は少なくありません。そんなときは、生理の様子や症状を記録できるスマホアプリやメモ帳を活用してみましょう。ナプキンの交換回数や経血の色・量、痛みの程度などを書き残しておくと、診察時に医師に正確に伝えることができます。

医師に伝えるときのポイント

婦人科で症状をうまく伝えられるか不安…という方も多いですが、簡単なポイントを押さえておけば大丈夫です。たとえば、「夜用ナプキンが2時間でいっぱいになる」「生理が10日以上続く」など、具体的な数字や状況を伝えると、医師も判断しやすくなります。あらかじめメモをしておくと安心です。

体験談|こんな症状から子宮筋腫が見つかった!

実際に子宮筋腫が見つかった方々は、どんなきっかけで病院を受診し、どんな思いで治療に向き合ったのでしょうか。ここでは、よくある経過やエピソードをご紹介します。

よくあるきっかけ「生理が多いと思ってたら…」

実際に子宮筋腫が見つかった方の中には、「昔から生理が重かったから体質だと思っていた」「貧血が続くので内科を受診したら婦人科の受診をすすめられた」という方が少なくありません。とくに、症状がゆっくり進行するケースでは、「我慢してしまった」「もっと早く受診すればよかった」と感じる方もけっこう多いようです。

受診から手術・治療までのリアルな声とは?

ある30代の女性Aさんは、強い生理痛と過多月経に悩まされて受診し、筋腫が7センチまで大きくなっていると判明しました。将来の妊娠を希望していたため、筋腫だけを取り除く手術を選び、現在は症状も落ち着いて生活が快適になったそうです。現在は、経過観察のために定期的にフォローを行っています。

また、40代の別の女性Bさんは、仕事の忙しさから受診を先延ばしにしていたところ、貧血が進行して入院が必要になったというご経験が。やはり、痛みや月経量といった悩みがきっかけで婦人科を受診しておくと、原因がみつかって治療を開始し、快適に過ごせるケースは多いので、「あのとき検査を受けてよかった」と話す方が多く、早めの受診が心身の負担を減らすカギになりそうですね。

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photo: PIXTA

まとめ|小さな体のサインを見逃さないで

子宮筋腫は、多くの女性にとって身近な病気で、婦人科でもよくみられます。経過観察で良いケースが多いですが、良性であっても、場所や大きさによっては、生理痛や貧血、妊娠への影響など、日常生活にさまざまな影響を及ぼすことがあります。
「生理が重いのは当たり前」と思っていても、実は子宮筋腫が隠れていることもあるし、治療を開始することで快適な生活を送れるようになることだってあります。だからこそ大切なのは、自分の体の変化に早めに気づくこと、小さなサインを見逃さないことです。

この記事では、子宮筋腫の症状や検査、治療の選択肢まで幅広くご紹介しましたが、すべての女性が同じわけではありません。症状の程度も違えば、将来の妊娠希望も異なりますから、ライフプランに合わせて、自分に合った治療を知り、選んでいくことが大切です。
ひとりで抱え込まずに、ぜひ婦人科で相談してみてください。医師はあなたの体と未来を守るためのパートナーです。crumiiがその一歩を踏み出すきっかけになれたら嬉しいです。

宋美玄 産婦人科医 crumii編集長

この記事の監修医師

丸の内の森レディースクリニック

院長

宋美玄先生

産婦人科専門医

丸の内の森レディースクリニック院長、ウィメンズヘルスリテラシー協会代表理事産婦人科専門医。臨床の現場に身を置きながら情報番組でコメンテーターをつとめるなど数々のメディアにも出演し、セックスや月経など女性のヘルスケアに関する情報発信を行う。著書に『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』など多数。

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