crumii編集長・宋美玄のニュースピックアップ #39
つわり治療薬不在の日本 持田製薬が「ボンジェスタ」承認へ始動
妊娠中に吐き気や悪心・嘔吐を及ぼすいわゆる「つわり」は妊娠中の症状の中でも最も辛い部類に入るものですが、つわりに対して正式に承認された治療薬がありませんでした。SNSでも度々つわりの症状が少しでも軽くなる薬を求める声が上がります。
そしてこの度、海外で広く使用されている悪阻治療薬「ボンジェスタ(Bonjesta)」について、持田製薬が国内での承認取得に向けて動くというプレスリリースを発表しました。ついに国内でもつわりの承認薬が使えるようになる日が来ると、選択肢を期待が高まっています。
つわりの妊婦さんはどうしているの?
つわり症状は全妊婦の約50~80%に起こります。一般的に妊娠5、6週ごろに始まり、8~10週くらいがピークとなり、16週頃には治ることが多いとされています。つわりで体調を崩している頃は流産が珍しくない時期と重なり、妊娠を公表するには早いと言われます。妊娠していることを隠しながら働いている人も少なくないのです。
妊婦健診では、つわりの症状を和らげたいとをよく受けます。つわりに対して承認されている薬というわけではありませんが、日本で広く使われている薬もあります。例えば、メトクロプラミドや、ドンペリドン、漢方薬などです。これらはつわりそのものを治す薬ではなく、症状をやわらげる目的で用いられています。すごくスッキリというわけにはいきませんが、「飲んだ方がマシです」とおっしゃる方が多いです。
こちらの柴田綾子先生の記事に詳しく載っています
https://www.crumii.com/categories/pregnancy/x8r9tlde00cvhesrx0i2upow

海外で広く飲まれている「ボンジェスタ」とは
「ボンジェスタ」は、ドキシラミン(抗ヒスタミン薬)とビタミンB6(ピリドキシン)を配合した薬で、欧米をはじめ37の国でつわりの治療薬として承認・使用されています。海外の産婦人科ガイドラインでは、つわりの治療の第一選択として推奨される場合もあり、症状の軽減に効果があるとされています。
日本では未承認ですが、個人輸入を行っている医療機関が自費診療で処方しているケースもあります。個人輸入ではなく、既存の抗ヒスタミン剤とピリドキシンをそれぞれ処方して2剤飲んでもらうこともあります。私自身の経験では、結構効果を感じている方が多いです。
持田製薬が承認取得に向けて始動
持田製薬は、カナダのDuchesnay Inc.とボンジェスタの国内展開に関する契約を締結し、日本での製造販売承認取得に向けた開発を進めています。承認取得にあたっては、厚生労働省(PMDA)への申請が必要であり、今後は臨床試験や安全性・有効性の評価が行われる予定です。日本産科婦人科学会が要望した経緯もあります。
承認のための臨床試験では妊婦さんに協力していただく必要があります。治験では妊婦さんとお腹の赤ちゃんの安全性を第一にしながら、薬の効果や副作用を慎重に評価します。
私のクリニックはこれまで数々の治験に協力してきました。治験に参加してくださる患者さんを募集し、経過をフォローし、データを収集するには非常に多くの時間と手間がかかることを実感しています。日本では、海外の各国で安全に使われている薬でも、承認のためには治験が必須であるため、一足飛びに承認というわけにはいきません。

承認は2030年ごろの見込み
こうしたプロセスを踏む必要があるため、実際にボンジェスタが日本で承認されるのは2030年ごろになる見込みとされています。少なくとも年単位の時間がかかるため、今つわりに悩む多くの妊婦さんにとってすぐの解決にはつながりませんが、未来の妊婦さんのためになることと思います。
妊婦のQOL向上に向けた期待
つわりは、多くの妊婦さんの生活に支障と大きな影響を及ぼすものです。正式な承認薬がまだない日本の現状は、長年指摘されてきましたが、ボンジェスタの承認に向けた動きは、こうした課題解消への大きな一歩となります。国内承認が実現し、安全で効果的な治療法が広く使われるようになることを願っています。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4534/tdnet/2731156/00.pdf
https://www.crumii.com/categories/pregnancy/x8r9tlde00cvhesrx0i2upow















