気になるキーワード 「つわり」 後編
後編|つわりはいつまで続く?症状・対策と、つらい時期を乗り切るヒント。
前編の記事では、つわりが起こる時期やタイプ別の特徴についてお伝えしました。今回はセルフケアや周囲への頼り方について深掘りします。
「もう限界……」と感じた時に知っておきたい受診の目安や、仕事を休んだり勤務の交渉の際に役立つ「母健連絡カード」の活用法など、つらい時期を乗り切るためのヒントをまとめました。
少しでも楽になりたい!つわりを和らげるためのセルフケアと工夫
【食事編】何なら食べられる?
おすすめ食材や食べ方のコツは?
つわり期に大切なのは、少量頻回と水分。ガイドラインでも、少量頻回の食事と水分補給を促すことが推奨されています。
・無理せず分割して食べる
1日3回にこだわらず、ひと口を何回も
・冷やしてみる
温かいもののにおいがつらい人は、
冷たい麺・冷やご飯・ゼリーなど
・酸味を足してみる
レモン、梅、酢の物、トマトなどが合う人も
・今いけるものをとりあえず摂取
ピーク期限定なら同じものが続いても全然OK
水の摂取が難しいなら、氷を舐めたり、炭酸水、薄いスポーツ飲料、経口補水液などに変えるのも手。電解質の摂取も可能で、味やフレーバーを変えてみると案外いけることもあります。

【生活編】家事や仕事はどうセーブする?
つわりのピーク期は、何もできなくなってしまう人もいます。いつも通りの日常やマイルールを諦めることも大事。
・体を締め付ける服は避ける
(腹部の圧迫で吐き気を助長することも)
・可能な範囲で家事はストップする
(短期の非常事態と割り切るマインドも大事)
・スマホの見過ぎを減らす
(光刺激で悪化する人もいます)
・好きな香りのアロマをたく
(つわり症状を誘発するにおいを消すため)
・通勤は在宅ワークや時差出勤の検討も
(職場に提出する書類について後述します)
妊婦さんが飲める薬もある。つらければ医師に相談を。
つわりのせいで日常生活に支障をきたしている場合は、主治医に相談して吐き気どめなどのお薬を処方してもらいましょう。これまで、妊婦さんに安全に使われてきた薬もあります。ただ、対象の薬は少なく、合う人には合いますが、効き方には個人差があります。あまり過度な期待はせず「効けばラッキー」くらいのマインドで。
つわりの対策やお薬については、こちらの記事にも詳しく解説しています。
つわり(妊娠悪阻)に対する薬について
海外で処方されているつわりの薬の治験もスタートしました。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。

無理は禁物!病院を受診すべき「妊娠悪阻(にんしんおそ)」の症状とは?
妊娠悪阻(にんしんおそ)とは、つわりが重くなって、食べられない・飲めない状態が続き、脱水や体重減少など体に支障が出ている状態のことをいい、治療の対象になります。ガイドラインでは、妊娠悪阻は体重減少・脱水・電解質異常などを呈し、全妊婦の0.5〜2%に発症するとされています。
こんな時は要注意
体重減少・脱水症状・トイレの回数が減った
目安として、厚労省の資料では、次のような状況が示されています。
| ・体重が1週間に2kg前後減る、尿中ケトン体が陽性、妊娠12週を過ぎても軽快しない など ・妊娠悪阻としては、1週間に3〜4kgの体重減少、尿中ケトン体(2+)以上、 肝機能(GOT/GPT)高値などで入院加療の目安になり得る |
「ケトン体」とは、体がエネルギー不足のときに、脂肪を分解して作られる物質のこと。つわりで食べられない状態が続くと尿にケトン反応が出ることがあります。家庭で判断するのは難しいので、症状として次のどれかがあれば、早めに産婦人科を受診し、相談してください。
| ・ほとんど飲めず、尿が少ない/濃い(脱水の兆候) ・立てない、ふらつく、動けない ・吐き気で薬も飲めない ・体重が明らかに減っている ・吐いたものに血が混じる、強い腹痛や出血がある (流産や異所性妊娠など、つわり以外の可能性も) |
産婦人科での治療
点滴、ビタミン剤投与と入院の目安
つわりがひどく栄養不足に陥ってしまった場合、医療機関では点滴をします。診療ガイドラインでは、脱水に対しブドウ糖を含む輸液にビタミンB1(チアミン)や吐き気どめの薬を混ぜて、十分に輸液することが推奨されています。
これは、長引く嘔吐と栄養不足によってビタミンB1が不足すると、ウェルニッケ脳症という神経の病気を引き起こす可能性があるため、予防的に投与することが重要だからです。
入院になるかどうかは、脱水の程度、体重減少、検査値、生活が成り立っているかなどを加味して総合判断します。

【パートナー・周囲の方へ】
つわり中の妊婦さんを支えるための具体的な行動とは?
「何か食べて」はNG!大事なのは声掛けと気遣い
「何か食べて」というのは、妊婦さん本人や赤ちゃんへの健康の気遣いからきている言葉ですが、本人からすると「私だって食べられるなら食べてるわ!」と言いたくなってしまいます。間違っているわけではありません。ただ、つわり中の妊婦さんは、食べられない自分、普段通りに動けない自分に傷ついていることが多いので、責めない聞き方や、負担を減らすための行動が大切になってきます。
例えば、においが無理な時期は、料理・洗剤・生ごみ処理がとくに負担になるので、それを交代する。上の子がいる場合は、送迎や入浴、寝かしつけを担当するなど、妊婦さんが安心して休める環境づくりが大切です。
・家事、育児を率先してやる
・無理なもの、大丈夫なものを共有し、大丈夫な範囲で分担する
・完璧(普段通り)にできなくても責めない
仕事とつわり、両立させるための制度を知る
「母性健康管理指導事項連絡カード」をうまく活用する
つわりがつらいのに休めない、通勤電車が地獄、職場に言い出しにくい、そういうときに頼れるのが、「母性健康管理指導事項連絡カード(通称、母健連絡カード)」。これは、主治医等の指導内容を事業主に正確に伝えるための仕組みで、医師が職場で必要な対応(通勤緩和、休業、業務負担の軽減など)について提示するものです。
たまに「診断書」を要求してくる会社もあるのですが、この母健連絡カード、医師の判断を提示するもので、事業主は、母健連絡カードの記載内容に応じ、男女雇用機会均等法第13条に基づく適切な措置を講じる義務があります。うまく活用して職場と相談し、仕事をセーブできるように調整しましょう。
まとめ|つわりのつらさを軽く見ないで
つわりは、妊娠初期に起こりやすく、多くの方が経験します。経験のない人の中には、軽い気持ち悪さ程度に考えてしまっている人も多く、周囲に軽く扱われたり、妊婦さん本人も「これくらい我慢しなきゃ」と思い込んでしまうことも。症状が重い場合は、点滴や薬などの治療が必要な人もいます。
この時期を少しでも楽に乗り越えるために、覚えておいてほしいことを3つにまとめます。
①無理に食べなくてもいい。水分だけは意識を
食事の量や栄養バランスへのこだわりはいったん手放して。水分が摂れているか、尿が出ているかを毎日確認するだけで十分です。
②使える制度は積極的に活用する
「母健連絡カード」は、職場への配慮を求めるための正式な手段です。遠慮せず主治医に相談を。
③「いつか終わる」は本当。でも限界なら受診する
多くの方が妊娠中期に入ると楽になります。ただ、尿が出ない、水分すら摂れない、体重が減る、ふらつくなど、いわゆる妊娠悪阻の兆候が現れたら、遠慮なく医師を頼ってください。
まずは完璧を求めないこと。食べられない日は食べられる物だけ食べる、動けない日は休む。いつか終わると信じて、周囲の協力も得ながら今日を淡々と生きていくことが大切です。毎日マクドナルドしか食べられなかったとしても、食べているだけで100点です。
赤ちゃんに会うための、今だけの時間。今日を生き延びることだけ考えて、一緒に乗り越えていきましょう。
<参考文献>
厚生労働省HP 働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について
















