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不妊治療 体験談

気になるキーワード「不妊治療」#03

【体験談】「いつかは子どもがほしい」そう思っているうちに30代後半に…それぞれに違う不妊治療の選択(後編)

不妊治療は、人それぞれに違うもの。そこで、実際に不妊治療をして妊娠出産した4人の女性に、治療を始めたきっかけから、どんなことが大変だったか、妊娠できなかったり流産したりしたときにどうやって乗り越えたかなど、お話を詳しくうかがいました。(この記事は全2回の2回目です→1回目はこちら)
※今回お話を伺った方は、全員が不妊治療の保険適用前に治療を経験しています。治療費は保険未適用となりますのでご了承ください。なお、D子さんのみ東京都の助成金適用でした。

【C子さんの場合】

看護師さんに言われた心ない一言

34歳のとき、区の「子宮ガン検診」で近くの産婦人科を受診して「子どもがほしいんです」と相談した際に医師からすすめられて不妊治療を開始することにしたC子さん。

「不妊治療は受診のタイミングが決まっているので、忙しい仕事とのスケジュール調整がとにかく大変でした。通院日はなるべく休みをとっていましたが、特にトラブルはなかったです。ただ、部下には理由を伝えていなかったので、もしかしたら私の休みが多いことに不満を持たれていたかもしれません」

その後、仕事と並行して治療を進めたものの、なかなか授からず、タイミング法から人工授精、体外受精へと、どんどんステップアップしていきました。

「そうして治療が進んでいくことに、心が追いついていかなかったです。しかも自己注射はトイレで打つこともあってつらかったし、採卵はとても痛くて……。そんなとき、ダメ押しのように看護師さんに心ない言葉をかけられて、本当に落ち込みました」

その言葉というのは、なんと「あなたより大変な人はほかにたくさんいる」というもの。大変さというのは比べようがなく、それぞれが大変なのに、です。

「受診時、担当医にいろいろ質問して診察が長引いてしまったからか、医師が退出して看護師さんと2人きりになったときに言われました。『身体的には問題がないし、通っている患者の中では若いほうだからすぐ妊娠するだろう』とも」

しかし、そんなにすぐにはうまくいきませんでした。

C子さんは卵管が詰まっていたので、その後すぐに腹腔鏡下手術をすることに。さらに回復してからも、出産するまでには時間がかかりました。C子さんは、その看護師さんとは顔を合わせないよう病院側にお願いしたそうです。

不妊治療の大変さは、体調面だけでなく、なかなか気持ちを理解されないというところにもあります。C子さんは、友人や義理の両親など、経験したことがない人には全く理解されないのだと孤独を感じたそうです。つらさを事細かに説明しても無駄だと思いました。

「子どもがいる人をうらやましいと感じ、子どもがいなくてもほしくない人には理解してもらえないと感じ、同じ立場の人はまわりに一人もいなかったので、友人にも会いたくなくなりました。そして、何をしていても楽しいと思うことがあまりなかったです。今思うと、この頃は少し心を病んでいたのかもしれません」

不妊治療 体験談 悩み
photo: PIXTA

気持ちの切り替えに役立った旅行

もちろん、夫は他の人たちと違って、妻であるC子さんの気持ちをよくわかってくれたものの、共に暮らしているわけですから、ときには少し衝突することもあったそうです。

「私が自己注射や通院が大変だと話すと、夫は9割方やさしい言葉をかけてくれました。でも、夫だって気持ちに余裕がないときもあります。そういうときは、自分だって大変だとアピールしあうことになって、ケンカになったことも。でも、家には愛犬がいたので空気を柔らかくしてくれて、自然と仲直りできました」

36歳のときに妊娠したC子さん。ところが残念なことに流産して、しばらく治療を休むことになりました。このときは、思い切って夫婦で旅行へいくことに。

「以前から行ってみたいと思っていたブラジルに『イグアスの滝』を見にいきました。不妊治療がつらく、また妊娠してもうまくいかなくて落ち込んだ私を励まそうと、夫が計画してくれたんです。壮大な滝を見たら自分の悩みがちっぽけに感じられ、帰国したらまた治療を頑張ろう、もしも授からずに治療をやめるときはその現実を受け入れよう、と思えました」

その他のときも妊娠の判定日に着床していなくて落ち込んだら、一時的にお酒を飲んだり、旅行に出かけたりして気分転換をしたそうです。

「伊豆の朝食が美味しい宿へ行って、夜はマッサージを頼んだりして特別にのんびり過ごしました。温泉へ行くことが多かったです」

そうして不妊治療を続け、37歳のときに2度目の妊娠。しかし、1度目の流産の記憶があって、なかなか素直に喜べなかったといいます。

「実際、陽性反応が薄く、担当医からもいつどうなるかわからないと言われて、不安な毎日を過ごしました。あまりおなかが目立たなかったので、職場でも7カ月までごく一部にしか伝えず、親しい人以外には出産まで妊娠したことを伝えていませんでした」

その後、無事に出産し子育て中のC子さん。「私にとって不妊治療はとてもつらいものでした。が、だからこそ誰かに参考にしてもらえたら嬉しいです」と。費用に関しては、あまり記憶がないものの、保険がなかったため百万円以上はかかったそうです。

【D子さんの場合】

人工授精を始めたものの授からず

不妊治療 体験談 人工授精
photo: PIXTA

30歳で結婚したD子さんが妊活を意識したのは意外と遅く、39歳のときでした。

「結婚して9年経っているせいもあってか、勢いが足らなくてセックスレス状態でした。妊娠のタイミングをとろうにも二人とも腰が重く、このまま時間だけが過ぎていきそうだったので、まずは近所の病院で人工授精を始めてみました」

人工授精は痛みもなく、1回6800円と安価だったので気軽に受けることができましたが、半年かけて7回やっても結果が出なかったので、体外受精にステップアップすることに。

今度は近所ではなく、友人が通っていた都心にある有名クリニックへ通うことにしたそうです。ただし、その病院は採卵の際に麻酔を使わない病院でした。

「同じ病院で採卵をした友人にどのくらい痛かったかを聞くたところ『採血くらいのレベルだよ』とのことだったので気ラクにのぞんだら、生理痛のひどいときの10倍くらいの痛みが襲ってきて、心の準備ができていなかったので大泣きしてしまって。思わず看護士さんの手を握ったのをよく覚えています(笑)」

あとで、その友人は痛みを感じにくいタイプだと判明し、D子さんは今でも「あのときのことは恨んでるよ〜」と伝えていて、笑い話になっているそうです。

そうして治療開始したD子さんは41歳のときに、一人目のお子さんを一度目の採卵からの新鮮胚移植で妊娠し、そのまま無事に出産に至ります。費用は保険適用はなかったものの東京都の助成金を使って13万円ほどでした。

夫婦で一喜一憂したのもいい思い出

その後、二人目を希望していたD子さんは、再び不妊治療することを決めたそうです。

「また不妊治療のクリニックに行こうと夫を誘ったとき、夫は『えっ? まだ産むのか』という顔をしていました(笑)。でも、私の意見を尊重してくれて一緒に行くことに。夫婦で意見の食い違いなどがなかったのは幸いでした」

二人目のお子さんのときは、3〜4回の採卵と移植を経て妊娠。費用は一人目と同じく東京都の助成金を使ったのですが、回数が増えたので100万円ほどだったといいます。

D子さんは採卵や移植の結果がわかる日は「受験の合格発表のような気持ち」になったそうです。ダメだったときは「いったんフラットな身体になった」と考えるようにしてお酒を楽しんだり、「またあの合格発表のドキドキを味わえる」と前向きに考えたりして乗り越えたといいます。

「そういうときは自然と外出したくなるので、控えていた飲み会に顔を出したり、子授けで有名な神社に出かけたり。あとは、特に根拠はなくても妊娠によさそうなものを買うのもストレス解消になりました」

もちろん、不妊治療は楽しいどころか、しんどいことが多いもの。でも、夫婦二人でクリニックに通う日は、都心の美味しいものを食べ歩きするなど楽しめるよう工夫したそうです。

「私は一人で通院しても大丈夫でしたが、診察室で夫と二人して一喜一憂したこともよい思い出として残っています。夫婦で何かを頑張ったり、お出かけしたりする機会が存在していたことは、不妊治療のいいところだったともいえるかなと思います」

不妊治療を通じて、夫婦でお互いの気持ちや将来の希望についてコミュニケーションをとったり、普段なかなか言いにくいことをあらためて言葉にして伝えることは、とても大切だと感じました。

最後に

誰にとっても不妊治療は大変なこと。今回取材させてくださった女性全員が口を揃えて話してくれたのは、なるべく不妊治療中も好きなことや楽しいことをして気分転換をしながら、不妊治療に取り組んでほしいということでした。ただし、それはなかなか難しいことでもあります。つらいときは、親しい人や医療者に相談しながら取り組んだほうがいいかもしれません。

【産婦人科医より】

不妊治療中は気分が落ち込みやすいことが、日本国内の研究からも報告されています。
とくに女性は検査や治療で通院回数が増え、仕事との両立がむずかしくなったり、ホルモンの薬によって、むくみや吐き気がでて体調が悪くなってしまうこともあります。
不妊治療中の質問や困りごとは、産婦人科医やスタッフへご質問いただくか、子どもの家庭庁が掲載している「全国の不妊専門相談センター」へご相談ください。

不妊専門相談センター
<不妊治療について詳しく知りたい方へ>
子ども家庭庁 妊娠・不妊のポータルサイト
日本生殖医学会 生殖医療Q&A

 

大西まお

編集者、ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な編集担当書は、宋美玄著『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』、森戸やすみ著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。

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